『2%の「物価安定の目標」の実現のために、できることは何でもやる。』
今月3日に行われた黒田日銀総裁の講演は、
このような力強い発言で締めくくられていました。
黒田総裁の講演録を日銀HPで読んで、勉強になったことがいくつかありました。
その一つが、経済・物価の先行きに対するリスクの認識です。
『原油価格の下落やそのもとでの新興国・資源国経済の動向、
さらにはそれを受けた世界的な金融市場の不安定な動きなど、
日本経済を取り巻く環境を踏まえると、
企業のコンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、
物価の基調に悪影響が及ぶリスクは増大している。』
こうしたリスクの顕在化を未然に防ぎ、
2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持することが、
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入理由であることを、
はっきりと述べられていました。
ところで、同じ日の日経新聞「経済教室」で、
渡辺勉・東京大学教授が、マイナス金利には限界があり万能ではなく、
また、消費者は、物価と賃金は表裏一体という事実を認識していないことなどから、
日銀は「賃金上昇率が4%になるまで金融緩和を継続する」
というメッセージを送ることを考えてはどうか、と提案されていました。
付け加えると、渡辺教授は、
賃金上昇率は物価上昇率に労働生産性の上昇率を加えたものに等しく、
労働生産性の上昇率を2%と仮置きすれば、
物価上昇率2%と合わせて賃金上昇率は4%であると解説されていました。
先ほどの黒田総裁は、「緩和手段の限界」という声に対して、
追加緩和の手段に限界はなく、
『日銀は、今後とも、金融政策手段のイノベーションに取り組んでいく。』
と、これまた力強く発言されていました。
渡辺教授の論考と合わせて読むと、
本当に金融緩和手段には限界がないように思えてきました。
マイナス金利政策に対する市場の評価は芳しくないけれど、
そうは言っても日銀がこれだけ汗をかいているわけですから、
政府は成長戦略で、企業は賃金引上げと投資で、「答え」を出してほしいものです。