『会社がなぜ消滅したか~山一証券役員たちの背信』
とても良い本だったので、さらに山一證券の経営破たんの真因が知りたくなり、
この本を購入した次第です。
まず、この本が書かれた目的について、
読売新聞東京本社社会部次長(1998年当時)だった清武さんが、
この本の「あとがき」で次のように述べられています。
『〈指揮の誤謬は、根本的には人間集団の誤謬であった〉
~フランスの歴史家マルク・ブロックは1940年、
ナチスドイツの前にフランス戦線が壊滅するのを目の当たりにして、
著書「奇妙な敗北」でそう記している。
山一の長い長い崩壊劇の中で、
ブロックの言うような「集団全体の誤り」を明らかにすることが、
この著作の目的ということができる。』
また、ノンフィクション作家の佐野眞一さんは、
本書の「解説」で次のように述べられています。
『ここに描かれているのは、組織というものがもつ本質的な恐ろしさである。
個人ならば自分の病変を肉体の不調で感じることができる。
しかし、組織の病変はそれほど簡単に察知できない。
なぜならば組織は個人ではなく、
個人がもつ卑劣さや尊大さなどの人間的弱さが知らず知らず堆積し、
個人ではもうどうにも手に負えない強固な無責任体制を
自動的かつ幾何級数的に増殖してしまうからである。』
『この本は、会社を経営する立場にある者はもちろん、
組織に属する者なら誰もが読むべき教訓を含んでいる。
本書を読んだ者は、うちの会社にも似たようなところがある、
うちの社にも同じようなヤツがいる、と考えいたって、
必ずや肌に粟が生ずる思いをすることだろう。』
そして、私がこの本で一番感動したのは、
山一証券の自主廃業発表の翌日、解約を求める客が全国の支店に殺到するなか、
当時、西首都圏本部長の堀嘉文さんが残した迫力あるメモでした。
『午後3時30分、店を閉めるよう指示が出た。
客が帰ろうとしない支店は混乱がさらに続いたが、
夕方には地獄のような初日がようやく終わった。
仕事を投げるような社員はいなかった。
やっぱり現場の判断でやるしかなかった。現場がいつも正しい。
客に迷惑をかけてしまった。
その気持ちが一つになって、辛い仕事を全うしたのだろう。
堀はメモに「最後の最後に、山一にいたことを誇りに思う」と記した。』
佐野眞一さんが述べられているように、
この本は組織のなかで生きていく人間にとって、
多くの教訓が詰まった本だと思います。
山一証券役員たちが背信行為を行う一方で、
支店という「現場」において、志の高い社員がいたことに、
胸が救われる思いがしました。
『しんがり』とセットで読まれることをお薦めします。