今月9日の日経新聞「こころ」欄に、
「生き心地の良い町」というタイトルの、興味深い記事が掲載されていました。
記事によると、和歌山県立医科大学保健看護学部講師の岡さんという方は、
島の自治体を除けば自殺率が日本一低い
自殺を予防する因子を浮かび上がらせたとのことで、
自殺の危険を抑える要素(=「生き心地の良い町」の条件)として、
次の5つが挙げられていました。
①多様性を重視する
②他者を人物本位で評価する
③主体的に社会と関わる
④他者に助けを求めることへの抵抗が小さい
⑤緩やかにつながる
このうち、①の多様性は組織の健全性にも通じるとして、
岡さんは次のように述べられています。
『集団には、放っておけば均質化する性質がある。
メンバーは変な奴だと思われて不利益を被りたくないから同質化し、
リーダーも効率を追求するには均質的な組織の方が有利と考えがちです。
ただ、均質な組織は硬直化して環境の変化に適応できない危険がある。
企業の発展にもイノベーションを生む異能の人材が必要。
多様性に富んだ組織の健全性は、海部町が証明しているのではないでしょうか。』
う~む、なるほど…。「多様性」という要素は、組織にとっても重要なのですね。
ちなみに、なぜ海部町が日本一自殺率が低いのかについて、
岡さんは、その独特の気質を培った「町の歴史」を次のように解説されていました。
『江戸期、この地は木材の集積地として栄え、
労働者や職人、商人が大量に流れ込みました。
町の黎明期には異質なものを排除していてはコミュニティーが成り立たないし、
家柄や職業がどうのこうのといっても取り合ってもらえない。
その人に何ができるかを見極める人物本位の評価は、
こうした町の成り立ちと関係あるのでしょう。』
女性の生魚行商人「おたた」さんや、農業のために貢献した義農作兵衛のほか、
近年では、実業家の坪内寿夫氏や元知事の白石春樹氏を輩出した町でもあります。
ひょっとしたら、松前町は海部町に負けず劣らず、
「人物本位」と「多様性」のある町なのかもしれません。