フィリピンのドゥテルテ大統領が、
「米国嫌い」とも見られる発言を繰り返す理由が、
今日25日の朝日新聞デジタル版の次のような記事を読んで、
ようやく理解できました。
どうやら、学生時代に学んだ反帝国主義の思想と、
14年前に起きた「メイリン事件」がその背景にあるようです。
『2002年、ドゥテルテ氏が市長だった
南部ミンダナオ島ダバオ市のホテルで爆発が起きた。
ドゥテルテ氏によると、
両足を失うけがをした米国人男性メイリン氏の部屋から爆発物が見つかり、
比当局が調べようとしたが、米連邦捜査局(FBI)のバッジをつけた人物が現れて
「マニラの病院へ運ぶ」と言い、通告もなく国外に連れ出した。
米側からはその後、一切説明がないという。』
『ドゥテルテ氏はベトナム反戦運動のさなかに学生時代を過ごし、
大学時代はフィリピン共産党創設者のホセ・マリア・シソン氏に師事した。
安全保障アナリストのリチャード・ヘイダリアン氏は
「反帝国主義者の本を多く読んだと聞く。
反米、反帝国主義の意見を持っていたはずだ」と指摘する。』
う~む……、なるほど。大統領にはそのようなトラウマがあったのですね。
その一方で、中国を訪問した大統領は、
南シナ海の領有権問題を棚上げする代わりに巨額の援助を引き出したそうです。
大統領は、軍事的にも経済的にも、本気で米国と決別するつもりなのでしょうか?
この点について、日経新聞電子版「ニュースをこう読む」の
村山宏解説委員による次のような解説が参考になりました。
『フィリピンの貿易相手を見てみたい。
輸出(2015年)先シェアは日本(21.1%)、米国(15.0%)、
中国(10.9%)、香港(10.6%)であり、中国と香港を足せば日本を上回る。
輸入は中国(16.2%)、米国(10.8%)、日本(9.6%)の順だ。
カジノなど国内の大型リゾートも中国人観光客に頼らざるを得ない。
これだけ中国との経済関係が深ければ
政治対立を緩和させたいとの思いがあって当然だろう。
中国との関係修復は驚くべきことにあたらない。
東南アジア各国はどこも中国との経済関係が深く、
外交は安全保障と経済のバランスのうえで成り立っている。
だから時々の情勢に応じて日米と中国のはざまを行きつ戻りつしているのだ。』
さらに、村山宏解説委員は、『アジアに明確な親中(反日米)陣営とか
親日米(反中)陣営とかは存在しない。絡み合った利害関係があるだけだ。』
と述べられていました。
何かにつけて米国との同盟関係を強調する日本だけが、
アジアにおいては異質・特異な存在なのでしょうか……?