町立図書館で借りて読み続けていた
『菜の花の沖(第1巻~第6巻)』(文芸春秋の単行本)を、ようやく読了しました。
江戸時代の廻船商人・高田屋嘉兵衛を主人公とした歴史小説ですが、
日本とロシアの二国間関係の歴史などについても詳しい解説があり、
歴史好きの人間にとっては、とても読み応えのある本でした。
そして、やはりこの本の醍醐味は、
嘉兵衛とディアナ号副艦長・リコルドとの国境を越えた友情を見事に描いている点と
日本とロシアの国境策定と国交樹立の交渉過程を描いている点だと思います。
ところで、今月15日には、ロシアのプーチン大統領の来日が予定されています。
その際、注目されるのは、日露首脳会談において
北方領土問題の交渉がどこまで進展するかです。
日本とロシアの二国間には、互いを信頼し尊敬し合うといった
過去の歴史があったことが、この本を読んで理解できました。
日ロ首脳も、「嘉兵衛とリコルドの教訓」を参考に、
両国の平和と友好のために、賢明な大局的決断をしていただきたいものです。
話が横道にそれました。
この小説の題名がなぜ「菜の花の沖」なのか、
以下の記述をこの日記に書き残しておこうと思います。
『嘉兵衛が、兵庫や大阪にも出ず、
故郷の前の沖を見るだけで過ごすようになるのは、
文政7年(1824)56歳の春からである。
かれが、その晩年を送るために都志本村に建てた屋敷は、
小さな野にかこまれていて、季節には菜の花が、
青い沖を残して野をいっぱいに染めあげた。
「嘉兵衛さん、蝦夷地で何をしたのぞ」と、村のひとがきいたとき、
「この菜の花だ」と、言った。 菜の花はむかしのように
村の自給自足のために植えられているのではなく、
実を結べば六甲山麓の多くの細流の水で
水車を動かしている搾油業者の手に売られ、そこで油になって、
諸国に船で運ばれる。たとえば遠くエトロフ島の番小屋で
夜なべ仕事の網繕いの手もとをも照らしている。その網でとれた魚が、
肥料になって、この都志の畑に戻ってくる。
わしはそういう廻り舞台の下の奈落にいたのだ、それだけだ、といった。』
志を高く持って生きることの清々しさを教えてもらいました。