しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「日本のバブルの物語」を読む

『バブル~日本迷走の原点』(永野健二著:新潮社)を読了しました。

 

まず、著者は本書の「はじめに」で、「バブル」を次のように解説されています。

・1980年代後半に、日本はバブル経済を経験した。

 バブル経済とは好景気のことではない。

 特定の資産価格(株式や不動産)が実体から掛け離れて上昇することで、

 持続的な市場経済の運営が不可能になってしまう現象のことである。

・資本主義の歴史は、バブル経済とデフレという二つの病の循環の歴史である。

 数十年単位でこの二つの危機の間を行き来する。

 やっかいなのは、バブル経済が将来のデフレの原因を育て、

 デフレへの対処が将来のバブル経済の原因をつくり出すことである。

・80年代のバブルとは、戦後の復興と高度成長を支えた

 この日本独特の経済システムが、耐用年数を過ぎて、

 機能しなくなったことを意味していた。日本経済の強さを支えてきた

 政・官・民の鉄のトライアングルが腐敗する過程でもあった。

・バブルとは、グローバル化による世界のシステムの一本化のうねりに対して、

 それぞれの国や地域が固有の文化や制度、

 人間の価値観を維持しようとしたときに生じる矛盾と乖離であり、

 それが生みだす物語である。

 

そして、著者は「本文」で、高橋治則、小谷光浩といった「バブル紳士」、

田淵節也野村証券、ピケンズと豊田英二、

山一証券副社長の自死三菱重工転換社債問題、江副浩正リクルート事件など、

「バブルの時代の渦中に、誰がどう振る舞っていたか、

またどの組織が、どんな行動を取っていたか」を詳細・丁寧に語られたうえで、

「あとがき」において、「バブル」を次のように総括されていました。

 

『バブルの最前線で揉まれ迷走していた立場からいうと、

 バブルとは、何よりも野心と血気に満ちた成り上がり者の

 一発逆転の成功物語であり、彼らの野心を支える金融機関の

 虚々実々の利益追求と変節の物語である。

 そして変えるべき制度を変えないで先送りをしておきながら、

 利益や出世には敏感な官僚やサラリーマンたちの、

 欲と出世にからんだ「いいとこ取り」の物語である。

 そして最後には、国民ぐるみのユーフォリア(熱狂)である。』

 

これまで、「バブル経済」や「失われた20年」の真因について、

いくつかの著書や解説に触れてきましたが、

実名入りの事実に基づく本書の迫力には圧倒されました。

なお、本書のなかには、会社と経営者にかかる次のような箴言もありました。

 

・会社の経営をぎりぎりのところで守るのは、運や偶然ではない。

 いつの時代も、現場への信頼と、組織としての規律、そして経営者の決断である。

・戦後の経営者群像を振り返ってみるとき、

 大衆から尊敬される経営者には、二つの条件がある。

 一つ目は、企業が持続的に成長して利益をあげていることである。

 そして二つ目は、大衆がほんとうに認める商品を作り出し、

 それで本業のビジネスを創り出していることである。

 

さらに、本書の巻末には、「バブル関連年表」や「参考文献」も記載されていて、

至れり尽くせりの内容でした。是非、一読をお薦めします。

 

バブル:日本迷走の原点

バブル:日本迷走の原点