NHKテキストの100分de名著『獄中からの手紙~ガンディー』を読了しました。
この著書の中で私が一番印象に残ったのは、
やはり、ガンディーが考えた倫理的経済、
そして「スワデーシー」(自国産品愛用運動)の根本にある
「ダルマとトポス」という概念について書かれた箇所でした。
中島教授によると、
「ダルマ」は実定法を超えた宇宙全体の法則のようなものであり、
自分がその中の有機体において果たすべき役割という意味、
一方「トポス」は、もともとギリシャ語で西洋的な概念で、場所を意味する、
それも、単なる場所ではなくて、それぞれの人が意味づけられている場所、
その場所に生きる人が「私がここに生きていて意味がある」
と感じられるような場所が「トポス」とのことでした。
そして、次のように述べられています。
『よく、「俺たちの時代は貧乏で大変だった」という話をされる年配の方がいます。
もちろん、それはそれで大変だったのでしょうが、
そこにはある意味での「豊かさ」があったように思います。
いくら貧乏な生活をしていても、仕事が大変でも
「頑張れば田舎の家族を食べさせられる」「もっと楽な生活ができる」といった、
「苦労する意味」、「生きている意味」が明確に見えていたはずです。
今の若者たちが生きている世界は、そうした「意味」を見いだせない世界です。
それはつまり、自分の「役割」や「生きる場所」
---ダルマやトポスを欠いてしまっている世界だといえます。
ガンディーなら、「それでは人間は生きられない」というでしょう。』
う~む、なるほど……。
確かに、私の子どもの頃も、家計は苦しそうだったけれど、
こころは今よりもずっと豊かに過ごしていたように思います。
ということは、皆それぞれに「役割」と「生きる場所」があったのかもしれません。
中島教授の解説は、さらに次のように続きます。
『スワデーシーの倫理とは、
まずは身近な人たちのために尽くすということからはじまる。
自分が今生活しているその場所において、なんらかの役割を果たし、
隣人たちに貢献することで、自分が生きている、
そこにいる意味を見出すことができる。
これは、まさにダルマとトポスという問題です。
ダルマを果たしてトポスに生きるということが、人間の本質ではないか。
ガンディーは、そう考えていたのだと思います。』
インド独立の指導者ガンディーの思想と行動が、
なぜ多くの人々に大きな影響を与えることができたのか……。
この著書を読んで、その「哲学」が少し理解できたように思います。

ガンディー『獄中からの手紙』 2017年2月 (100分 de 名著)
- 作者: 中島岳志
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/01/25
- メディア: ムック
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