先月27日の朝日新聞デジタル版「論壇時評」に、
タイトルは『人間と機械~AIが絶対できないこと』で、
その冒頭は、「将棋の藤井聡太四段は、AI(人工知能)に勝てるだろうか。」
という質問で始まります。
その答えの前提として、次のような分かりやすく説得力のある解説がありました。
・いわば現行のAIは、保守的な性格を持つともいえる。
「イノベーション」を説明する例え話として、
「馬車をいくらつないでも鉄道にはならない」というものがある。
それと同様に、馬車のビッグデータをAIに学習させても、
鉄道の発明には直結しない。むしろそれは、馬車の改良を促してしまうだろう。
・もちろん人間は、歴史を学ぶことで、未来を革新できる。
だがそのためには、過去のデータから、統計的に例外でも重要な事例に着目し、
価値を与えることが必要だ。そういうことは、AIにはできない。
AIにできるのは、過去の延長で未来を予測することだけだ。
・つまり問題はこうだ。AIそのものは新しい価値や成長を生み出すわけではない。
イノベーションを起こすには、新しい価値や、社会制度の変革が必要だ。
だがそれは、人間にしかできない。
・「人間はAIに勝てるか」という問いがある。
だが実は、人間は昔から機械に負けている。 自動車より早く走れる人はいない。
しかしそのことで、「人間は自動車に負けた」と嘆く人はいない。
それは、自動車を人間の補助として使いこなせるように、
社会のあり方を革新(イノベーション)したからだ。
人間が機械に勝てるとすれば、機械と競争することによってではなく、
機械と共存できるように社会を革新することによってである。
・新技術の導入だけで経済が成長するなどという期待は、
高度成長への誤解に基づくノスタルジーにすぎない。
古い社会や古い政治を延命するためにAIを使えば、多くの人が犠牲になる。
それこそ、「人間がAIに負ける」という事態にほからならない。
そうではなく、AIと共存できる社会に変えていくために、
人間にしかない英知を使うべきだ。
う~む、なるほど……。大変勉強になりました。
AIの本質というものが理解できたように思います。
AIをおそれるよりも、むしろ、人間の英知が失われることを
私たちは心配すべきなのですね……。
なお、冒頭の答えは次のようなものでした。
『彼はAIに勝とうとしていない。
AIを相手に練習し、AIを自分を磨く道具にした。
まるで、自動車と競争するのでなく、
自動車を使いこなすべく社会を変えた人々のように。』