今日6日の日経新聞「核心」欄に掲載された、大林尚・上級論説委員の執筆による
『タダより高いものはない~もつか、全世代の社会保障』というタイトルの論評を読んで、
少し考えるところがありました。
この記事の前半部分を私なりに要約すると、概ね次のような内容になります。
『1960年代後半、飛鳥田一雄・横浜市長や美濃部亮吉・東京都知事など
革新系の首長が推進した高齢層の医療費無料化等の人気取り政策を横取りするように
田中角栄首相が70歳以上の医療費を全国一律に無料にする改正老人福祉法を国会で成立させ、
併せて5万円年金の実現を閣議決定したのが1973年(昭和48年)。
以来、この年が「福祉元年」と呼ばれるようになる。
ところが、耳に心地よいその響きとは裏腹に、医療と財政の立て直しに挑んだその後の政権は、
例外なくこの福祉元年の亡霊に苦しむことになり、
75歳以上の後期高齢者に原則1割の窓口負担を求める制度の実施にこぎ着けたのが
小泉純一郎首相時代の2008年。じつに「福祉36年」だった。
同時に実施するはずだった70代前半の2割負担への引き上げは、
小泉後の政権が毎年度2千億円規模の補正予算を組み、最近まで1割に据え置き、
2割への引き上げは、今なお途上にある。
こうしてみると、タダのツケがいかに大きいか、
そしてタダの受益層に少しばかりの有料化を納得してもらうのに
どれほどの政治的エネルギーを費やすのかがわかる。』
う~む、なるほど‥‥。
私はてっきり70代前半の医療費自己負担は、全員が2割だと思っていました。
しかし、調べてみると、26年4月以降70歳となる方が対象だったのですね‥‥。
そして、『今回の衆院選で安倍首相は、教育・子育ての無償化を公約し、勝利。
その対象は0~2歳の保育(低所得世帯)、3~5歳の保育園・幼稚園、高等教育(同)。
返さなくてもよい奨学金制度を充実させるとも力説し、
高齢層には手厚いが若者と子供に冷たい福祉元年の当然の帰結を、
あらゆる世代に報いるべく変革すると訴えた。「全世代型の社会保障」への転換である。』
‥‥記事には、このように書かれていました。
再び、う~む‥‥。
同じ記事のなかで、財務省出身の田中秀明・明治大教授が
『教育と保育にかける公費を増やす方向に日本がカジを切るなら、
増税したとしても高齢者向けの年金・医療費を抑えるべきだとの結論におのずとなる。』
とおっしゃっていましたが、確かにそのとおりだと思います。
『果たして、全世代型の社会保障は持続可能なのか?』という問い掛けに対しては、
記事で指摘されているように、「タダより高いものはない」という格言を、
私たち国民は肝に銘じておく必要がありそうです。
一度実行に移した無料化政策を再び元に戻すことが、いかに大変な労力を必要とするかは、
この私でも容易に想像がつきます。どの世代も痛みを伴わない改革はあり得ないと思います。