今日8日の朝日新聞デジタル版に掲載された、山脇岳志・編集委員の執筆による
『(ザ・コラム)公務員の定年延長 専門性、磨くきっかけに』というタイトルの
次のような内容のコラムを読んで、深く反省し、そして、考えるところがありました。
『何の専門家でもない自分‥‥。時折、苦い思いがこみ上げる。
事件、高校野球、地方行政、金融、情報通信、調査報道、米国政治や経済‥‥。
それぞれの取材は興味深かったが、これが専門だと胸をはれる分野はない。
かつて後輩に「専門分野をみつけて、高いビルを建てたらいい。
幅広い取材で基礎固めをすれば、そのビルは倒れない」と助言したことがある。
自らを顧みると、基礎固めで精いっぱい。ビルは建たなかった。
記者は、「ゼネラリスト」であることを生かすべき職業だろうけれど、
それだけでは十分ではない。質の高い情報が、無料でインターネット上でとれる時代である。
専門家と渡り合えるような知見を身につけつつ、現場に足を運ばなければ、
読み応えのある記事を書くのは難しい。
「ゼネラリスト」志向は、メディアに限らず、日本の企業に幅広くある。
霞が関の中央官庁も、その典型である。
キャリア官僚たちは、事務次官という最高ポストをめざし、さまざまなポストを経験する。
有力政治家にうまく根回しして政策を実現できれば、役所内で評価される。
「ミニ政治家」的な官僚は、たくさんいる。だが、世界は複雑化し、技術革新も早い。
政策判断が難しい中、政策立案の専門性を、どれだけ磨けているだろうか。
~ (中略 )~
いま、政府は公務員の定年延長について検討している。
関係省庁の検討会議で方向性が出れば、人事院が具体的に検討し、勧告を出すことになる。
60歳の定年を時間をかけて65歳までのばす。60歳で給料は下げ人件費を抑制する。
そういった方向で検討が進むのだろう。
年金をもらえる年齢はやがて65歳になり、定年をのばす企業が増えている。
人件費の総額が増えていかないならば、公務員の定年延長がおかしいとは思わない。
だが、延長と同時に真剣に考えなければならないのが、専門性の問題だろう。
次官をめざすゼネラリストばかりを養成するのではなく、
専門性で勝負するスペシャリストを大幅に増やすべきである。
そうなれば、役所の権限や予算配分、資金の運用などを背景にした「天下り」ではなく、
本人の専門性を生かした民間への転職もしやすくなる。』
私は、地方公務員として働いた36年の間に、
商工行政、市町村行政、農政、私学・法令、政策・予算、監査、議会などの仕事を
2~4年のスパンで経験しましたが、山脇編集委員と同じように、
「これが専門だ」、「これが得意だ」と、胸が張れる分野がないまま定年退職しました。
36年間のうちには、選管書記を通算で14年間務め、多くの選挙を経験しましたが、
定年退職後の仕事ではほとんど役に立つことがありません。
それならば「ゼネラリスト」としての能力を発揮できたのか、と問われるとそうでもなく、
定年退職後の仕事をこなすなかで、「テクニカルスキル(業務遂行能力)」さえ
ろくに身に付けてこなかったことに気づき、愕然としています。
コラムでも指摘されているように、これからの時代は、国の官僚に限ったことではなく、
地方公務員も「スペシャリスト」が求められているのかもしれません。