阿刀田高さんの「私の履歴書」を読んだことをきっかけに、久しく積読状態だった
『ギリシア神話~神々と英雄に出会う』(西村賀子著:中公新書)を読了しました。
当たり前とはいえ、カタカナの登場人物が多く、読み通すには忍耐を必要とする本でした。
本書で一番印象に残ったのは、ホメロスの『イリアス』についての、次のような記述でした。
『神意という、目に見えない強力な枠組みのなかにありながらも、
「イリアス」の登場人物たちは自らの意志で行動を選択し、その責任を負う。
たとえば、アキレウスは自分の将来について、ある予言を聞いていた。
その予言の内容は、もし彼がトロイアで戦えば短命に終わる、
だが参戦しなければ長寿をまっとうするだろうというものだった。
アキレウスは二者択一の運命を知りながら、親友の命を奪った敵に復讐するために、
文字どおり生命を賭けて闘うことを選んだ。不死なる神々とは異なり、
人間は死の定めを逃げえれない。しかし人間にとっていかに大きな制約があろうとも、
そして残された自由がどんなにわずかであろうとも、そのなかで自分自身の生を選び、
その生を真摯に精一杯生きる人の姿が「イリアス」には描かれている。
全篇に溢れる、人間の限界へのあたたかい眼差し。この叙事詩の魅力はまさにそこにある。』
この文章を読むと、やっぱり人間に生まれてきて良かったと思います。

ギリシア神話 -神々と英雄に出会う (中公新書 (1798))
- 作者: 西村賀子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/05/26
- メディア: 新書
- 購入: 3人 クリック: 7回
- この商品を含むブログ (13件) を見る