しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

神々と英雄の本を読む

阿刀田高さんの「私の履歴書」を読んだことをきっかけに、久しく積読状態だった

ギリシア神話~神々と英雄に出会う』(西村賀子著:中公新書)を読了しました。

当たり前とはいえ、カタカナの登場人物が多く、読み通すには忍耐を必要とする本でした。


本書で一番印象に残ったのは、ホメロスの『イリアス』についての、次のような記述でした。

『神意という、目に見えない強力な枠組みのなかにありながらも、

 「イリアス」の登場人物たちは自らの意志で行動を選択し、その責任を負う。

 たとえば、アキレウスは自分の将来について、ある予言を聞いていた。

 その予言の内容は、もし彼がトロイアで戦えば短命に終わる、

 だが参戦しなければ長寿をまっとうするだろうというものだった。

 アキレウスは二者択一の運命を知りながら、親友の命を奪った敵に復讐するために、

 文字どおり生命を賭けて闘うことを選んだ。不死なる神々とは異なり、

 人間は死の定めを逃げえれない。しかし人間にとっていかに大きな制約があろうとも、

 そして残された自由がどんなにわずかであろうとも、そのなかで自分自身の生を選び、

 その生を真摯に精一杯生きる人の姿が「イリアス」には描かれている。

 全篇に溢れる、人間の限界へのあたたかい眼差し。この叙事詩の魅力はまさにそこにある。』


この文章を読むと、やっぱり人間に生まれてきて良かったと思います。

ギリシア神話 -神々と英雄に出会う (中公新書 (1798))

ギリシア神話 -神々と英雄に出会う (中公新書 (1798))