『三島由紀夫 ふたつの謎』(大澤真幸著:集英社新書)を読了しました。
本書は、そのカバーに書かれてあった、次のような「文学史上最大の謎」に、
社会学者の著者が挑んだもので、難解な記述に戸惑いながら、また、分析の鋭さに驚嘆しながら、
最後まで興味を持って読み通すことができました。
『近代日本が生み出した最高の知性が、なぜこれ以上ないほど「愚か」な最期を選んだのか?
そして、「究極の小説」を目指して執筆した最後の長編「豊饒の海」のラストは、
なぜ支離滅裂ともいうべきものになつたのか?』
著者の明晰な推論を読んでも、三島由紀夫が自衛隊市谷駐屯地で割腹自殺した動機と理由は、
凡人の私には到底理解できません。
「死人に口なし」という言葉がありますが、本人でないと決して分からない世界だと思います。
それよりも、本書は、三島文学の最高のガイドブックになっています。
10代後半から20代前半にかけて読んだこれらの本から、数年前に読んだ「豊饒の海」まで、
三島由紀夫その人と、作品に込められた思想が、まるで歴史書を読むかのように解説されています。
本書を読んで、もう一度、「仮面の告白」や「金閣寺」などを読んでみたいと思いました。
「今度は、また違う発見があるかもしれない」
そんなことを思わせる、魅力的な本だと思います。
なお、蛇足ですが、本書を最後まで読み通すためには、
その前提として「豊饒の海」を読んでいることが必須のように私には思われます。ご参考までに‥。

- 作者: 大澤真幸
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/11/16
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (1件) を見る