今日の朝日新聞デジタル版「耕論」は、『嫌われ者の消費税』というタイトルの記事でした。
「過去には増税にかかわった政権の多くが選挙で敗北している。なぜ消費税は、こんなに嫌われるのか。」
という問い掛けに対して、いつものように3人の有識者の方が回答されていましたが、
そのなかでも、 野口悠紀雄・早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の、
次のような発言が勉強になりました。ほぼ全文を引用させていただきます。
『戦後の日本の税制や財政構造は、戦時中につくられた「1940年体制」を引き継いでいます。
消費税が選挙で「鬼門」になってしまうのは、日本人の意識と社会構造が、
いまだに1940年体制のままだからです。
戦前の日本の税制は、直接税ではなく間接税が中心で、欧州型に近かったと言えます。
しかし、1940年体制では直接税、特に所得税と法人税が中心で、所得税の源泉徴収も導入しました。
戦争遂行のために、歳入を確保する必要があったからです。
歳出面では、社会保障が想定されていませんでした。
勤めている企業が一生を保証するという発想だったのです。
その財政構造は、高度成長期の60年代までは機能しましたが、徐々に社会保障への要求が強まってきます。
政府は「福祉元年」といわれた73年ごろから、財政構造を「福祉型」へと転換させました。
歳出面では年金や医療など社会保障費が巨大化し、
税制では消費税など間接税の比重を高めようとしたのです。
それにもかかわらず、日本社会の構造も、人々の考え方も、変わりませんでした。
消費税と年金に代表される福祉型の財政構造は、日本人のメンタリティーに合わないのかもしれません。
だから常に選挙の「鬼門」になるのです。
~ (中略) ~
これからの日本には、二つの選択肢があります。
一つは、消費税率をこれ以上引き上げずに、
定年延長や、健康が許す限り働き続けることで老後の保障を実現する方法。
いわば1940年体制を維持するやり方です。
もう一つは、消費税を北欧諸国なみに引き上げ、社会保障で一生の面倒を見る福祉国家をつくる。
つまり、1940年体制からの脱却です。
この二つのどちらを採るのかという根本的な議論はされてきませんでした。
本来なら2千万円問題を契機に、参院選でその議論をすべきなのですが、
与党も野党も見当外れの議論しかしていません。一方で、国民は現実を冷静に見ていると思います。
6月にネットでアンケートをしたのですが、「金融庁の報告書をどう評価しますか」という問いに、
8割近くが「老後資金に関する適切な注意だ」と答えた。
年金だけで生活できないことは多くの人が理解しています。
そうした国民の健全な感覚を政治に反映させることができれば、
戦後の日本を縛ってきた1940年体制から脱し、
消費税と年金が鬼門でなくなる日がくるかもしれません。』
う~む、「二つの選択肢」ですか‥‥。難しい選択だと思います。
私としては、気力と体力に自信がないので、長く働き続けるのは無理だと思うし、
かといつて、消費税が欧米並みになると、老後の生活がますます苦しくなりそうだし‥‥。
できれば、福沢諭吉の「国を支えて国を頼らず」の思想・精神を身に着けたいけれど、
現実は厳しいものがあります‥‥。