しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

ビジネス戦略の難しさを学ぶ

今日から8月です。遅い梅雨明け以降、厳しい暑さが続いています。

子どもの頃は夏が大好きだったのに、どうしてこんなに苦手になったのかしら‥‥?


さて、先月20日と27日に日経電子版「スキルアップ塾」に掲載された、

『あの天才がなぜ転落?』という連載記事がとても面白かったです。というか、勉強になりました。


この連載は、一度は成功者として脚光を浴びながら、転落、

富も名声も失って貧しく寂しい最期を迎えた天才たちの生涯と「失敗の本質」を分析するものです。

最初に取り上げられたのはカリフォルニアで大農場を持ちながら、

ゴールドラッシュで転落したジョン・アウグスト・サッター。

自分の土地から金鉱脈が見つかったばかりに、破滅の階段を転がり落ちてしまった人です。


20日の第1回目ではサッターの転落の経緯について書かれ、

27日の第2回目では「サッターはなぜ失敗したのか、どうすればよかったのか」について、

次のような内容が、経営学的視点の分析として書かれていました。

少々長くなりますが、この日記に書き残しておこうと思います。


・なぜサッターは砂金発見という大きなチャンスを、生かせなかったのか。

 そこには、ビジネス戦略の根本的な誤りがあった。

 強い競争力を持つ経営資源を獲得した場合、それをどのように利用するのか。

 そこには大きく二つの戦略がある。「クローズ戦略」と「オープン戦略」だ。


・クローズ戦略は、経営資源の内容を秘密にしたり、特許権を取得したりすることで、他人を排除する。

 経営資源の囲い込み(クローズ)によって、利益を独占しようとするのだ。

 サッターも砂金という経営資源を、クローズ戦略で利用しようとした。

 砂金の情報を秘匿して自分の管理下に置き、そこから得られる利益を独占しようとしたのだ。

 ところが、ここに大きな落とし穴があった。

 サッターはクローズ戦略に必要不可欠な「参入障壁」を築くことができなかったのである。


経営資源を囲い込むためには、他者がそれを利用できないようにする参入障壁が必要となる。

 サッターの場合、自分の農場に柵を張り巡らせ、警備員を配置し、

 情報が漏れないように徹底する必要があった。

 しかし、農場はあまりに広大で、他者の侵入を防ぐことなど不可能だ。

 また、砂金が露出していることから、その場所を隠すこともできなかった。

 さらに、不運なことに、政府が作ってくれるはずの参入障壁も、

 米国に編入されたばかりのカリフォルニアにはなかった。


・もし、サッターがオープン戦略を採っていたらどうなっただろう。

 オープン戦略は保有している経営資源を開放するというものだ。もちろんこれだけでは利益を得られない。

 オープン戦略は基本となる経営資源を無料化する一方で、

 そこから生まれてくる付随的なビジネスで利益を上げようとするものだ。


・サッターの場合のオープン戦略は、農場を開放して砂金を採りに来た人々を迎え入れ、

 一方で、彼らに向けたビジネスを展開することになる。

 砂金を独り占めできなくても、サッターは曲がりなりにも農場の所有者だった。

 その優位性を生かせば、砂金に対しての参入障壁が作れなくても、

 周辺ビジネスではある程度の参入障壁を作ることができたはずだ。

 これはサッターにとっての、新たなビジネスチャンスになりえた。


う~む、なるほど‥‥。

ビジネス戦略には「クローズ戦略」と「オープン戦略」があるのですね‥‥。

ちなみに、記事では、サッターが採用することが可能だった「オープン戦略」として、

次のような事例が挙げられていました。

・所有する農場内に店舗を作り、食料品や衣料品などの生活必需品、

 砂金を採るためのつるはしやショベルといった道具類などを販売する。

・農場が自分の土地であるという強みを生かして、食堂や宿泊施設などを独占的に提供する。

 採掘された砂金を買い取る交換所を作ることで、手数料収入を稼ぐ。


そして、記事は、クローズ戦略しか考えることができなかったのが

サッターの「失敗の本質」だったと結論付けていました。

「成功者は金を掘らなかった」‥‥。

「優れた経営資源を探し当てたり、創り上げたりすることは容易ではない。

しかし、それ以上に難しいのが、それを生かすビジネス戦略だ」ということを、

「サッターの失敗」から、この私も学ぶことができたと思います。