しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

失望と裏腹の政策

台風8号が足早に通り過ぎていきました。

こちらでは台風の影響はほとんどなく、かえって農作物には恵みの雨になったかもしれません。


さて、昨日5日の日経新聞「経済教室」に掲載された、白井さゆり・慶応義塾大学教授の執筆による

『現代貨幣理論MMTは実現可能か~国民の納得・生産性向上課題』

というタイトルの論考が勉強になりました。

まず、MMTとはどのような理論なのか、白井教授は次のように述べられていました。


MMTは需要拡大効果として歳出拡大を金融緩和よりも重視し、

 インフレ調整手段として税金が金利よりも効果的だとみなす。利下げは必ずしも需要拡大をもたらさないが、

 歳出拡大は直接的な雇用拡大により総需要を刺激できるからだ。

 政府は自国通貨(中銀当座預金)で歳出を増やし、

 債務拡大をためらわずに完全雇用と物価安定を目指すべきだと主張する。

・財源調達のための増税国債発行も必要ない。

 中銀当座預金の増加は金利を下押しするので民間投資のクラウドアウト(押し出し)も起きない。

 景気過熱で大幅なインフレになれば、増税で抑制し自国通貨を吸収(中銀当座預金を縮小)できるとの見解だ。

 自国通貨での増税はインフレ調整手段のほか、民間の自国通貨需要を高め

 その価値を維持する役割があると考える。


そして、肝心のMMTの実現可能性については、白井教授は次のように述べられていました。

MMTの実行可能性にはいくつか課題が残る。

 最大の問題は、増税は利上げ以上に国民の反発を招きやすく機動的な実行が難しいことだ。

 しかもMMTで拡充した社会保障制度を持続的に運営できると国民を納得させ消費を喚起するには、

 綿密な広報戦略が必要だ。インフレリスクが高まり社会保障給付の削減を余儀なくされれば

 社会保障制度は持続性を失うし、それを今から予想する国民がいれば消費を増やさないだろう。

・第2に人手不足の中での歳出拡大は労働者の奪い合いを激化させて、民間経済活動を萎縮させる恐れがある。

 賃金は上昇圧力を高めても、企業間競争が激化し市場の縮小・横ばいが見込まれる中で販売価格への転嫁は

 容易ではなく、企業収益が圧迫されかねない。

 しかもMMTは、低金利政策が労働生産性を下押しする副作用を軽視している。

 低金利環境では貸出金利や債券価格が企業の信用リスクを十分反映せず、

 不採算企業が温存され新陳代謝が緩慢となり、労働生産性の改善を妨げかねない。

・第3にMMTは、低金利の長期化がもたらす市場のゆがみや、

 保険・銀行などの金融機関に及ぼす副作用への考察が少ない。


う~む、なるほど‥‥。MMTはインフレ調整を、「金利」ではなく「税金」で行うことが理解できました。

でも、どうやらMMTの実現には、高いハードルがあるみたいですね‥‥。

知識不足の私にはよく分からないけれど、白井教授がご指摘のように、

「財政拡大政策への関心の高まりは、金融緩和政策への失望と裏腹‥‥」のような気がします。