しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

器の中身を捨てる

NHKテレビテキスト、100分de名著『貞観政要~呉兢』を読了しました。

番組指南役でテキストの執筆者は、出口治明立命館アジア太平洋大学学長、

貞観政要」は、唐第二皇帝・太宗李世民が、臣下とともに理想の皇帝像を模索した問答集です。

テキストのなかで最も印象に残ったのは、次の記述でした。


『人間には持って生まれた器(能力)があります。

 「努力すれば人の器は大きくなる」という発想は、根拠なき精神論に過ぎません。

 ひたすら練習すれば誰でも百メートルを九秒台で走れるかというと、そんなことはあり得ませんね。

 スプリンターとしての器は先天的なものだからです。

 自分の器を劇的に大きくすることはできない。

 しかし、器が大きくならなくても、自分の器の容量を増やす方法はあります。

 それは、器の中身を捨てることです。器の中に入っているものを全部捨てて、空っぽの状態にする。

 言い換えれば、自分の好みや価値観など、こだわっている部分をすべて消してしまうのです。

 自分が築きあげたと自負する仕事観や人生観、自分は正しいという思い込みなどを、

 いったんすべて捨てて、無にしてしまう。

 頭の中をゼロの状態に戻すことができれば、器が大きくならなくても、新しい考え方を吸収し、

 自分を正しく律することができるはずです。

 すでに述べたように、太宗は積極的な諫言を部下に奨励しました。

 彼がその諫言を受け入れることができたのは、自分の器の中身を空っぽにしたからです。

 自分がそれまで持っていた価値観を捨てて、新しい価値観を受け入れる。

 このことができたからこそ、太宗は「偏信」に陥ることはなかったのです。』


ところで、私の書棚には、昭和59年2月・9刷の

帝王学~「貞観政要」の読み方』(山本七平著:日本経済新聞社)が静かに眠っていました。

パラパラとページをめくってみると、付箋を貼ったり、線を引いた箇所がまったくありません。

もう少し真面目に読んでいれば、その後の人生に少しは役立っていたのかもしれません。(反省)

それにつけても、「器の中身を捨てる」というのは、「目から鱗が落ちる」思いでした‥‥。

呉兢『貞観政要』 2020年1月 (NHK100分de名著)

呉兢『貞観政要』 2020年1月 (NHK100分de名著)

  • 作者:出口 治明
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2019/12/25
  • メディア: ムック