NHKテレビテキスト、100分de名著『貞観政要~呉兢』を読了しました。
番組指南役でテキストの執筆者は、出口治明・立命館アジア太平洋大学学長、
「貞観政要」は、唐第二皇帝・太宗李世民が、臣下とともに理想の皇帝像を模索した問答集です。
テキストのなかで最も印象に残ったのは、次の記述でした。
『人間には持って生まれた器(能力)があります。
「努力すれば人の器は大きくなる」という発想は、根拠なき精神論に過ぎません。
ひたすら練習すれば誰でも百メートルを九秒台で走れるかというと、そんなことはあり得ませんね。
スプリンターとしての器は先天的なものだからです。
自分の器を劇的に大きくすることはできない。
しかし、器が大きくならなくても、自分の器の容量を増やす方法はあります。
それは、器の中身を捨てることです。器の中に入っているものを全部捨てて、空っぽの状態にする。
言い換えれば、自分の好みや価値観など、こだわっている部分をすべて消してしまうのです。
自分が築きあげたと自負する仕事観や人生観、自分は正しいという思い込みなどを、
いったんすべて捨てて、無にしてしまう。
頭の中をゼロの状態に戻すことができれば、器が大きくならなくても、新しい考え方を吸収し、
自分を正しく律することができるはずです。
すでに述べたように、太宗は積極的な諫言を部下に奨励しました。
彼がその諫言を受け入れることができたのは、自分の器の中身を空っぽにしたからです。
自分がそれまで持っていた価値観を捨てて、新しい価値観を受け入れる。
このことができたからこそ、太宗は「偏信」に陥ることはなかったのです。』
ところで、私の書棚には、昭和59年2月・9刷の
『帝王学~「貞観政要」の読み方』(山本七平著:日本経済新聞社)が静かに眠っていました。
パラパラとページをめくってみると、付箋を貼ったり、線を引いた箇所がまったくありません。
もう少し真面目に読んでいれば、その後の人生に少しは役立っていたのかもしれません。(反省)
それにつけても、「器の中身を捨てる」というのは、「目から鱗が落ちる」思いでした‥‥。