「こよみのページ」によると、今日はベートーベンの命日「聖楽忌」とのことで、
日経新聞一面コラム「春秋」には、次のようなことが書かれていました。
とても秀逸なコラムだと思うので、その全文をこの日記に書き残しておこうと思います。
『あれは東日本大震災の翌年だったろうか。
東京・赤坂のレストランで、日本での永住生活を始めたドナルド・キーンさんを囲む
メディア関係者の集いがあった。
戦時中、海軍の情報将校としてハワイの日本人捕虜収容所に勤務していた際の
心に響くエピソードを聞いた。
戦争末期。捕虜のなかに、マリアナ諸島に派遣された同盟通信の従軍記者がいた。
「サイパン特派員の見た玉砕の島」という戦記を残した高橋義樹さんだ。
彼はベートーベンを愛していた。とりわけ交響曲第3番「英雄」を。
キーンさんは、音がよく響く収容所のシャワー室で、英雄のレコード・コンサートを開いたのだ。
「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓に殉じた日本兵の末路を、
その目に焼き付けた高橋さんである。
異郷の収容所で、どんな思いであの豪壮で雄大な第1楽章を聴いたのだろう。
戦後、捕虜たちと敵国の将校は長く友情を育んだという。指揮者は誰だったのか。
キーンさんに音源をお尋ねしなかったことが悔やまれる。
「ベートーベンの音楽は、ほかのどの音楽よりも、悩むものの友達であり、ときに慰め手である」。
音楽評論家の吉田秀和さんの言葉だ。東京五輪の1年延期が決まった。
この1カ月で世界は変わってしまった。苦悩を突き抜け、歓喜へ至る数々の楽曲を聴いてみようか。
きょうは、1827年に没した楽聖の命日である。』
コラムニストの奥深い教養と知性を感じさせるコラムでした。
ちなみに、今日は、室生犀星の命日、「犀星忌」でもありました。
『ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの
よしや うらぶれて異土の乞食となるとても 帰るところにあるまじや』
この室生犀星を題材にすると、今日のコラムはどのような内容になったのでしょうか‥?
想像するだけで、なぜか気持ちが穏やかになるような気がします‥‥。