今月8日付けの「溜池通信vol.690」の特集は、
『コロナ対策に見る「失敗の本質」』 というタイトルで、
示唆に富む内容が盛りだくさんのレポートでした。
「かんべえ」さんは、政府の機能不全ぶりについて、
名著「失敗の本質~日本軍の組織的研究」(中公文庫)に、いくつものヒントが詰まっていて、
「過去の失敗に学ばないと、コロナ対策も新たな「負け戦」になってしまうのではないか」
と危惧されていました。
まず、レポートのなかで「かんべえ」さんは、2020年5月という現時点は、
全体のプロセス の中ではせいぜい序盤3分の1 といったところで、
この間のわが国は、官民を問わず随分不手際を繰り返してきたとして、
その内容を次のように分かりやすく、時系列に整理されていました。
・ 中国からの入国制限の遅れ(習近平主席訪日の予定に忖度?)(1月)
・ ダイヤモンド・プリンセス号をめぐる検疫の不手際(2月)
・3月の3連休に桜が開花したところ、外出が増えて全国的に感染者が増加(3/21~23)
・ 東京五輪の延期を決めてから(3/24)、慌てて「不要不急の外出自粛」を要請(3/25)
・ 「1 世帯当たり2枚の布製マスクを配布」(アベノマスク)が不評(4/1)
・ 東京都に追われる形で7都府県に「緊急事態宣言」(4/7)⇒のちに全国拡大(4/16)
・ 閣議決定済みの補正予算を、あまりの評判の悪さに急きょ組み換えを決断(4/16)
・5月6日までの予定であった緊急事態宣言を、5月末まで延長(5/4)
そして、「日本政府のコロナ対応がうまくいっていないのは、
不運も含めていくつもの理由が重なっている」として、次のような理由を挙げられていました。
・安倍長期内閣に「緩み」が生じていて、官邸の求心力が低下している。
特にこれまで危機管理の中心であった菅義偉官房長官の存在感が薄くなっている。
・東京五輪の開催、習近平訪日など、気を遣うべき外交事情が多かった。
・感染防止の先頭に立つ、都道府県など自治体との連携がうまく行っていない。
・「医療」という専門家の世界が閉鎖的であり、対外的な説明がうまく行っていない。
う~む、なるほど‥‥。
こうして分かりやすく整理していただくと、理解度が進んでとっても有難いです。
なお、今回のレポートでは、このほかにも、特に印象に残った記述が3つありました。
その一つは、「政治家はジェネラリストであり、
ジェネラリストがスペシャリストを盲信するようでは困る。
政治家がちゃんと専門家を使いこなすこと。そして信用を取り戻すこと。」というご指摘。
二つ目は、野中郁次郎先生の、「伝えるべき教訓」として引用されていた
「何が物事の本質か。これを議論し突き詰める組織風土を維持しつづけることだ。それに尽きる。」
という言葉。
三番目は、「「戦力の逐次投入」「兵站や諜報を軽視する」「防御への関心が薄い」といった
日本軍の悪い癖は、すべて「短期思考のなせる業」だと考えるとまことにわかりやすい。
長期思考であれば、当然、 その正反対を選ぶはずだからだ。」というご指摘。
危機においてこそ、名著に学ぶことが多いことを、
「かんべえ」さんのレポートを読んで、改めて認識した次第です。