日経新聞一面コラム「春秋」を毎日読んでいると、
年に数回、涙腺が緩み、心を打つコラムに出合うことができます。
今日のコラムが、まさにそのような「名コラム」でした。以下、全文をこの日記に書き残しておきます。
『真ん中にイスラム教の礼拝堂モスクを配置し、その周囲を麦の穂がぐるりと円状に取り囲む。
かつて東西の交易路として栄え、「文明の十字路」と呼ばれたアフガニスタンの国旗である。
小麦はこの土地に生きる人々の糧であり、「聖なるもの」の象徴でもあるという。
19世紀に英国、ロシアの勢力争いに巻き込まれ、近年は同時多発テロをめぐる戦禍で国土は荒廃した。
「戦乱の十字路」へと様変わりだ。加えて度重なる干ばつが、民を苦しめた。
荒野を黄金色の麦の穂が風になびく沃野に‥‥。
土木技師がいない現場で設計図を引き、ひたすら井戸を掘った男がいた。その数1600本。
昨年、凶弾に倒れた医師の中村哲さんは、義理と人情のクリスチャンだった。
〈高倉健演ずる「花と龍」の金五郎は祖父なり 弱者を見捨てておけぬ〉とは
「いまだ生を知らず、いずくんぞ死を知らん」の死生観は、
共通の価値を見いだす知性。寡黙にして対話の名手。なぜこの人が、と誰もが天を仰いだ最期だった。
「一粒の麦、もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん、死なば多くの実を結ぶべし」
の聖句が想起される。冬ざれの大地に種は落ちた。
あすは、現地で「ナカムラのおじさん」と慕われた平和の使徒の忌日である。』
このコラムの中で印象に残ったのは、「共通の価値を見いだす知性」という言葉でした。
はっきりと説明することは私にはできませんが、
その伝えようとする言葉の趣旨は、雰囲気として理解できるように思います。
この「知性」を持つ人こそが、人々の範となる、真のリーダーなのだと思います。
どこかの国の某大統領とは違って‥‥。