『竹中平蔵 市場と権力~「改革」に憑かれた経済学者の肖像』
(佐々木実著:講談社文庫)を読了しました。
作家で数学者の藤原正彦さんが、「文藝春秋12月号」の「亡国の改革至上主義」で、
この本を取り上げられていたのが購入の動機ですが、
大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞したのも頷ける、
実に読み応えのある、面白い本でした。
竹中氏といえば、『経済ってそういうことなのか会議』(日本経済新聞社)の
「牛乳のフタ」に代表される、その平易で分かりやすい語り口と説明で、
これ以降、私が「経済学」に興味を抱くようになった、いわば「先生」ともいえる存在です。
その「竹中先生」が、「小泉内閣から安倍内閣に至る20年間にわたり政権の中枢にいて、
ありとあらゆる巧言と二枚舌を駆使し、新自由主義の伝道師として日本をミスリードし、
日本の富をアメリカに貢いできた、学者でも政治家でも実業家でもない疑惑の人‥」
という一面があることを知って、正直、愕然としました。
ただ、一方で、「竹中先生」を擁護するようですが、
この本のなかに登場する、ご本人の言葉に、
「‥‥政策は非常に細かな行政手続の積み重ね。だから、難しいんです。
細かいことがだんだん分からなくなってくると、みんな思想と歴史の話をします。
大いにされればいいが、それで政策を議論すると間違えます」‥‥があります。
これは、複雑多岐な行政の現場で、汗をかいて政策を実行した人でしか、
語れない言葉ではないかと私は思っています。
「日米構造協議」や「竹中プラン」、「郵政民営化」等の「日本の構造改革」とは、
いったい何だったのか‥? 等々を振り返って総括するためにも、ぜひ一読をお薦めしたい一冊です。