しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「読む」読者を、変える力を持つ文章

『「読む」って、どんなこと?』(高橋源一郎著:NHK出版)を読了しました。


今月7日の朝日新聞一面コラム「折々のことば」で、鷲田清一さんが、

この本のなかの、『問題山積みの文章だけが、「危険!近づくな!」と標識が出ているような文章だけが‥‥

わたしやあなたたちを変える力を持っている』という言葉を、解説されていたのが購入の動機です。


実際に本を読んでみると、この言葉の前に、高橋先生は、次のようなことを述べられていました。

『わたしには、ひとつ、大切にしている原則があります。

 もちろん、これは、わたしの個人の原則です。どこでも通用するものではありません。

 (ほんとうは、どこでも通用するものだとは思っていますが)。

 それは、たくさん問題を産み出せば産み出すほど、別のいいかたをするなら、

 問題山積みの文章こそ、「いい文章」だ、ということです。

 つまり、その文章は、問題山積みのために、

 それを読む読者をずっと考えつづけさせてくれることができるのです。

 素晴らしい比喩がたくさん使われている、とか、ボキャブラリーが豊富である、とか、

 精密な論理が構築されている、とか、ワクワクドキドキするようなお話が満載である、とか、

 読んだことのない、聞いたことのない知識や情報がいっぱいある、とか、

 ただただうっとりする、とか、そういった、誰だって、いいといいそうな文章ではなく、

 それを読んでいると、不安になったり、それを読んでいることを隠したくなったりする、

 つまり、問題山積みで、できたら近づきたくないような文章、

 そういうものこそ、「いい文章」だ、とわたしは考えています。』


う~む‥‥。(絶句)

「読む」ことについて、今までの価値観を変えてしまいそうな、そんなインパクトのある言葉です。

ところで、今まで私は、私を変えた「文章」に、出合ったことがあったのかしら‥‥?

たぶん、あったのだけれど、本人にその自覚がないのだと思います。

これからは、もう少し真剣に、「読む」ことに向き合わなければなりません‥‥。

わずかの時間で読めるけど、実は書かれているその内容は、とても奥の深い、価値ある本だと思います。