朝日新聞デジタル版の「論壇時評」に、ジャーナリストの津田大介さんが、
『森発言の「成果」~更新を続ける価値観、変革の力』というタイトルの論評で、
次のようなことを書かれていました。こういう視点もあるのだと、大変勉強になりました。
『米調査機関ピュー・リサーチ・センターが昨年発表したレポートによれば、
日本人男性の77%が「男女平等は達成される/された」と答え、
女性の58%と19ポイントもの開きがある。この差は調査対象国で最大だ。
この男女間の意識のギャップに「変われない日本」の原因が見て取れる。
同質性の強い旧来の日本型組織はメンバーに学びの機会がなく、
価値観をアップデートすることができない。
しかし、現在の日本社会は抑圧された女性やマイノリティーが
ネットを通じて「わきまえ」ずに発言し、連帯することが可能だ。
彼らの連帯を目の当たりにした個人の中には、そこから学び、価値観を更新する人もいるだろう。
ここ数年ジェンダーの問題で企業や個人の“炎上”が増えたのは、
「組織」の論理にこだわり「個人」としての価値観を更新できない人と、
既に価値観を更新した人のギャップが背景にあるのではないか。
そしてこのギャップの拡大は必ずしも悪いことだけではない。
かつてなら通り一遍の謝罪で見逃されたであろう森発言が、
今回は国内外のメディアから五輪のスポンサーまで、女性から男性まで、高齢者から若者まで、
あらゆる属性の人々から批判が渦巻き、その矛先はやがて組織委のあり方や、
女性蔑視を構造的に許容する日本型組織に向かっていったからだ。
まったくの怪我(けが)の功名だが、森氏の「わきまえている女性」発言によって、
前政権により「経済問題の一つ」に矮小(わいしょう)化されていた
「女性活躍」が初めて普遍的な人権問題に格上げされ、国民的、国際的な議論へと発展したのだ。
今回の騒動で日本人の価値観が知らぬ間にアップデートされていることに気付いた人は多いだろう。
そしてその変化は少なくない女性と男性に勇気を与え、
選択的夫婦別姓の実現など政治的にも大きな力になるはずだ。
もしかしたら日本は、森発言によって五輪開催以上の大きな「成果」を手にしたのかもしれない。』
う~む、なるほど‥‥。
森元会長の発言を最初に聞いたときに、あまり違和感を覚えなかった私は、間違いなく、
「個人としての価値観がアップデート」できていない人間だと思います。
なお、我が家では、奥様が「圧倒的な発言力」を有していることを付言しておきます。