昨日付で国立国会図書館のHPで公表された
「新興感染症の流行と対策~新型インフルエンザ等への対応を振り返る~ 」
というレポートが大変勉強になりました。
なかでも、2009年に起きた「新型インフルエンザ(A/H1N1)」についての、
例えば、次のような各方面からの「指摘」の文章を読むと、
「デジャブ」(既視感)を感じるところがあります。
・結果的に、水際対策により「時間稼ぎ」している間に
国内での感染拡大に備えて態勢を整えるべき医療現場が疲弊してしまった。
・水際対策は、膨大な資源と時間が投入されたのに比して、効果は極めて限定的であった可能性が強い。
・学校等の臨時休業について、「今回は一定の効果はあったと考えられる」としつつも、
今後更にその効果や在り方を検討すべきであり、
学校の休校に当たっては、保護者などが欠勤を余儀なくされるなどの
社会的・経済的影響も勘案した運用方法を検討すべき。
・2009年4月から2010年2月末までに
政府の担当部署から約150件もの通知・事務連絡が出され、さらに通知の内容が現場に伝わる前に
マスメディアによる報道が先行して伝えられることもあったことから、
明確にその意図が医療機関に伝わらなかった。
・マスメディアによる報道も「事件」に関することが中心であり、
感染状況の総説的な分析や評価など本質についての腰を据えた解説、説明が少なかった。
・情報公開や報道による影響も出た。
初期に感染者が出た学校では、学校名が連日報道されたことにより、
保護者や教職員がタクシーで乗車拒否をされたり、病院で診療拒否にあったりした。
心ない言葉を掛けられた生徒もいたとされる。
う~む‥‥。これってまるで、今回の新型コロナウイルスについての記述のようです。
そのうえで、新興感染症への対応として、レポートでは次のような示唆に富む記述がありました。
『感染症に対応する上で注意しなくてはならないのは、
感染症の感染力や致死率等は発生した時点では分からないことである。
本項で取り扱った SARS、MERS、新型インフルエンザ(A/H1N1)も、
今でこそその致死率や感染経路等が推測できるが、発生当時は未知の感染症であり、
手探りでの対応を余儀なくされていた。
感染症は、当初から、理論的に計算して感染力や病原性を算定できるものではなく、
広がっていく中で、徐々にその正体が明らかになっていくものであり、
危機管理上、ウイルスの実態が不明の間は、最悪の状態を想定した対策を打ち、
その後、正体が分かっていくにつれて柔軟な対応をするということが求められるとされる。』
『感染症はそれぞれ感染力や致死率等、異なる部分はあるが、対策として共通する部分もある。
繰り返される感染症の流行に備えるためにも、過去の感染症への対応策を検証し、
必要な対策については常に準備を進めておくことが求められるであろう。』
「たしかに人間は忘れやすい生き物である。
それでも子や孫、ひ孫、その先の世代まで伝えたい教訓はまちがいなくある。」
という記述がありました。
今回の新型コロナウイルスへの対応についても、
「教訓を次の世代に伝えることの大切さ」を学んだ次第です。