しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「歓喜」と「悲鳴」

一階和室の西側に設置した日よけシェードで、身を刺すような日差しは随分と遮ることができたものの、

室内の温度は思うように下がりません。今日も猛烈に暑かったです‥‥。


さて、東京オリンピックの日程も残りわずかとなりました。

コロナ禍で開催されたこの大会での競演を、当時の国民はどのような思いを抱いて観戦していたのか、

後世に語り継ぐにふさわしい秀逸なコラムだと私は感じたので、

今日の日経新聞一面コラム「春秋」の全文を、次のとおりこの日記に書き残しておきます。


ローマ帝国を舞台にしたスペクタクル映画「ベン・ハー」。

 最大の見せ場として知られる戦車競走は、実は古代オリンピックの種目でもあった。

 騎手は4頭の馬に引かせた二輪の車を操り速さを競う。

 生死をかけた壮絶なレースに競技場を埋め尽くした観客は熱狂した。

 古代ローマの為政者はこうした娯楽のほか、

 ふんだんに食料をばらまいて民衆の関心を政治からそらそうとした。

 詩人ユウェナリスが「パンとサーカス」と詠んで風刺した愚民政策である。

 この政治手法に、我々もまんまとのせられるのか。

 そんな思いがよぎるたび、興奮に熱くなりかけた胸は、幾度となく水をさされた。

 「13年ぶりの連覇」「兄妹で同じ日に金メダル」「まさかの予選敗退」。

 使い古された言葉だがオリンピックにはドラマがある。心躍る驚きがある。

 自国で存分に体感できる幸せを子供の頃からどんなに夢見たことか。

 だからこそ、この競演を心の底から祝福し、楽しめる気分になりきれないことが、今さらながら悔しい。

 メダルを手にした選手の歓喜の声と、病床逼迫に悩む医療従事者の悲鳴。

 それらが同じニュース番組から聞こえてくる。

 こんな悩ましい状況に人々を投げ込まずにすむ方法はなかったのか。

 国のトップの言葉は、いまだ一向に響かない。打つ手なき爆発的感染の下での不完全な開催。

 もはやかなわぬ夢のあとを夏草に思う。』


歓喜」と「悲鳴」が同居した「悩ましい大会」として、長く語り継がれるのでしょうね、きっと‥‥。