今日は、良く晴れて風もなく、穏やかな一日となりました。
さて、今月3日の朝日新聞一面コラム「折々のことば」は、同月8日に退任されたメルケル元ドイツ首相の
「謙虚とは無気力の謂(いい)ではなく、無限を知ったことから生まれるポジティブで、
希望に溢(あふ)れて生を形成する感覚です。」という言葉で、
いつものように鷲田清一さんの、次のような解説がありました。
『人は歴史の濁流に巻き込まれて少なからぬ過ちを犯してきたが、そのことから学びもしたと、
ドイツ初の女性首相は語る。自身の判断を超えたものの存在やにわかには理解できない他者の思いを、
率直に認める謙虚さを備えてはじめて、より正しい選択もできるのだと。
講演集「わたしの信仰」(V・レージング編、松永美穂訳)から。』
今月8日の日経新聞電子版では、ドイツの3人の専門家が、
「長期政権を可能にしたメルケル政治とは何だったのか」についてコメントされていました。
・「虚栄心なしにとても力強く、妥協点を見つけ実行する」
「メルケル氏の真剣さと能力への信頼は政治的な立場を超えてかなり高いものだった」
(フライブルク大学のウルリヒ・アイト教授)
・「すべてを多数派の意思に従属させることこそがメルケル政治の本質だった」
「倫理的な価値観と国益が対立するときは、たいてい権力維持を優先してきた」
「メルケル氏は変化を望まない社会の象徴だった」
・「気候変動にどう対応し、何をすべきかを知っている数少ない政治家のひとりだった」
「気候変動対応を政権の仕事の中心に据えようとしなかった」
(ジャーナリストのウルズラ・ワイデンフェルト氏)
なお、今月2日に開かれたベルリンでの送別式典でメルケル氏は、
「政治においてもっとも重要な資産は信頼だ」とか、
「不機嫌さや妬み、悲観主義ではなく、心に喜びをもって働くことが重要だ」という言葉も残されています。
本人のお言葉の数々とその実績の裏付けから、稀代の政治家であったことは間違いない事実だと思います。
追記
今月4日の「折々のことば」も、おなじメルケル氏の
「重要なのは、わたしたちが正しい問いを出すことです。
そして‥‥正しい答えを聞く耳を持とうとすることです。」という言葉でした。
鷲田さんは、『時代をめぐる「正しい問い」は「正しい答え」を含んでいるはずで、
それを政治の手法で実現してゆくことが望まれると、ドイツ初の女性首相は語った。』と解説されています。