日経新聞で連載が続いている「ニッポンの統治」。
政治や官僚機構が機能不全に陥っている原因や修復への道筋を、有識者の方が答えるシリーズで、
今日は、先崎彰容(せんざきあきなか)・日大教授へのインタビュー記事が掲載されていました。
今回の主なQAは、次のような内容でした。
Q 新型コロナウイルス禍で日本の統治を巡る機能不全が顕在化しました。
A 戦後の日本は権力の集中を避け、熟議で時間をかける民主主義を大事にしてきた。
この決定に至る「遅さ」が新型コロナ対応で脆弱さとなった。
緊急事態宣言や保健所の運用を巡っては政府が地方をグリップすることもできなかった。
これまでの常識では解けない問題をつきつけられたのが新型コロナだった。
欧州は民主主義国でもロックダウン(都市封鎖)した。
一方、お願いベースの日本は国家の危機に対処する最終責任を国民の自助努力に押しつけたのと同じである。
これは「民主主義とは権力への市民の抵抗である」という戦後の常識からも外れた特異な現象だった。
その結果、自粛警察のようにバラバラの正義感が跋扈(ばっこ)し、社会が無秩序になる可能性もあった。
Q 新しい国家像をどう見つけていくべきですか。
A 国も企業も成長できなくなると過去の成功体験にとらわれがちだ。
日本の場合は高度経済成長やバブル景気の記憶が残るが、
社会構造が大きく変わった現代に持ち出しても機能しない。
リーダーが社会の変化を見極めて、中長期的なあるべき姿を示さなければいけない。
国の指導者である首相には社会全体のマインドを変える力がある。
Q 政治主導がうまく働いていないようにみえます。反動で官僚機構の劣化も指摘されます。
A これまで集中していた権威が分散する現象が社会全体で起きている。
政府では首相官邸の権限は強くなったが、霞が関の地位が低下した。
官僚の仕事は与えられた仕事をこなすだけになりクリエーティブな仕事が減った。
官僚を含む若者世代が政治より起業に関心を向けるのはそのためだ。
官僚に国の骨格づくりに携わっているというやりがいをもっと与えるべきだ。
本来、閣僚は「決断」するのが仕事であり、その選択肢を提供するのは官僚だ。
現状は政治家の決断する胆力が低下し、官僚の政策をつくる権限が落ちている。
ありゃりゃ‥‥、気が付いたらほとんど全文に近い引用になってしまいました。
いずれもごもっともなご指摘ですが、
特に、「お願いベースの日本は国家の危機に対処する最終責任を国民の自助努力に押しつけたのと同じ」
というご指摘は、長く記憶にとどめておくべきだと思いました。
日本という国家の「特異(得意?)な体質(DNA)」なのかもしれません‥‥。