久しぶりに、日経新聞「経済教室」から‥。
今日からの「コロナ危機を超えて」の連載、その第一回目は、吉川洋・立正大学長が
『格差是正への「負担」合意急げ』というタイトルの論考を寄稿されていました。
『‥‥岸田政権は「成長と分配の好循環」をめざす。
短期的には「分配」、すなわち給付金が消費を喚起し成長を促進するというロジックである。
だが社会保障の将来に対する不安から給付金の大半は消費ではなく貯蓄に回ってしまう。
政権が求める賃上げも同様だ。仮にめざす賃上げが1年実現しても、
家計が恒常所得の上昇を実感しない限り、消費への影響は限定的にならざるを得ない。
長期的な問題を解決しなければ、短期の「好循環」すら生まれない。
恒常的な所得の上昇を生み出すのは経済成長だ。
経済成長、とりわけ1人当たりの所得を上昇させる成長を生み出す源泉は、
イノベーション(技術革新)である。
ケインズは、イノベーションを生む民間企業の活力をアニマルスピリッツと喝破した。
政府の仕事は「成長戦略」を単なるレトリック(修辞)に終わらせず、速やかに実行することだ。
格差を抑制する所得再分配は、社会の安定のために必要だ。
中間層がやせ細って栄えた国がないことは、歴史が教える重い教訓である。
日本の場合、格差の是正は人口減少に歯止めをかける必要条件でもある。
資本主義社会で中長期的な格差を抑えるのは、税と社会保障だ。
年金・医療・介護保険などの制度が持続するには、言うまでもなく応分の負担がなされねばならない。‥‥
‥‥今の国民負担率では社会保障を持続できない。
公費で何とか支えているものの、税収が恒常的に足りず、それが財政赤字に平行移動している。
公債のGDP比は2倍に達する。「負担」に関する社会的合意を形成すること、
これが政府にしかできない「分配」に関する最も重要な仕事である。』
う~む‥‥。
税と社会保障を合わせた日本の国民負担率は44.7%‥‥。
ちなみに、欧州主要国の国民負担率は、英国48.6%、ドイツ55.8%、フランス68.0%だそうです。
吉川先生は、「負担」に関する社会的合意を形成することが、
政府にしかできない「分配」に関する最も「重要な」仕事であるとおっしゃっていますが、
実は、この「社会的合意形成」こそが、最も「難しい」仕事ではないかと、私は思っています。