昨日の愛媛新聞に、哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんが、ロシアのウクライナ侵攻に関し、
「ソ連崩壊前夜と類似~人口減 国力衰退に焦り」という論評を寄稿されていました。
萱野先生は、フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドが、
ソ連崩壊をその15年前に予見していたのは、71年を境にソ連の乳児死亡率が上昇していたことに注目し、
社会主義体制にあったソ連の内部で構造的な危機が深まっていることを読み取ったからだとし、
それと同じことが今回のウクライナ侵攻にも当てはまるのではないか、と述べられています。
具体的には、ロシアは91年のソ連崩壊以降、社会的混乱によって出生率が大きく低下し、
長期的な人口の自然減に直面しているとのこと。つまり国力の縮小です。
そして、ソ連が深刻化する社会危機に直面していたからこそ、外に向けた軍拡を推し進めたように、
NATOの東方拡大によって自らの勢力圏がむしばまれているという焦りがあり、
この焦りは内なる国力の縮小に対する焦りによって容易に増幅される、と指摘されていました。
う~む、なるほど‥‥。こういう視点での物事の捉え方もあるのですね。勉強になりました。
なお、萱野先生は2016年8月に、
NHKEテレ、100分de名著『カント~永遠平和のために』の指南役を務められましたが、
そのテレビテキストの最後に、次のようなことを述べられていました。
『人間は理想のために戦争をします。
それを考えるなら、平和を少しでも確かなものにするためには、理想論をこえた哲学が不可欠です。
それがあってはじめて私たちは、人間愛についてと同様、
理想論の甘美さに身をゆだねることができるのです。』
哲学的な視点から戦争や平和を考えると、
これまで気づくことのなかった「人間や社会の本質」がみえてくる‥‥。
どうやらもう一度、萱野先生執筆のテキストを再読・復習する必要がありそうです。