しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

地上でもっとも不可解な国

プーチンとロシア人』(木村汎著:産経NF文庫)を読了しました。

読了後は、付箋だらけになっていました。

印象に残る記述があまりにも多すぎて、こうなると付箋を貼る意味がほとんどなくなります。(苦笑)


著者は本書の中で、ウィンストン・チャーチルが「第二次世界大戦回顧録」で記した

「ロシアは、謎(riddle)のなかの謎(enigma)に包まれた謎(mystery)である。」を再三引用されていました。

著者によると、ロシアは「地上でもっとも不可解な国のひとつ」だそうです。

そうであるならば、ロシア人の一人であるプーチン大統領ウクライナ侵攻という行動は、

世界中の国々の、世界中の人々には、まったく理解できないことが理解できます。


そして、著者は、プーチン大統領が持っている強硬なロシアの対外的行動様式に対しても、

ロシア国民は少なくとも表立って反対していないとして、

「ロシア国民こそは、プーチン大統領の立派な共犯者」とみなさなければならない、

プーチン大統領とロシア国民という両者が、ロシア式メンタリティーの持ち主である以上、

当然至極といえる結論だろう、と述べられています。

2019年に逝去された著者にとって、今回のウクライナ侵攻も、想定内の出来事だったのかもしれません。


なお、「ロシア文学の主人公」に関しての次のような記述も、強く印象に残った次第です。

『ロシアでは時代差に関係なく、一貫してみられる特徴がひとつある。

 それは、文学作品にあらわれる主人公の多くが、俗世界における物質的幸福や外部的自由の充足ではなく、

 自己の内面的な世界における精神的満足をより重視する人間として描かれていることである。

 ドストエフスキイの小説に登場する人物の多くが、その好例である。

 彼らの胸中を占めているのは、決して地上での幸福や事業、いわんや政府や行政のことではない。

 彼らにあっては、自己の内面生活における自由、真、善、美こそが最大の関心事なのである。

 だからこそ、彼らはそれらの価値について果てしなき議論を展開し、

 他のことを一切かえりみようとしないのだ。』


プーチン大統領というより、ロシアとロシア人を理解するうえで、「必読の書」だと思いました。