昨日の続きです‥‥。
11月6日(日)の朝日新聞一面コラム「天声人語」には、次のようなことが書かれていました。
『‥‥古くからあるこの理論が最も注目されたのは、
サッチャー英政権が新自由主義や「小さな政府」を目指した1980年代だ。
そのころ英国の大学で学んでいた私は、「馬とスズメ理論」だと習った。
講師は「馬に麦をたっぷり与えれば、
その排泄物でスズメがおこぼれにあずかれるという考え方」と説明した。
トリクルダウンの名が広がったころ、もしやあの講師だけが下品だったのか気になって調べたら、
米経済学者のガルブレイス氏が言及していた。
貧困層に非常な理論で、「常に軽い嘲笑で迎えられた」と書いた。‥‥』
このコラムに登場する「トリクルダウン」とは、
「富裕層や大企業が豊かになれば中間層以下にも効果が滴り落ちるという経済理論」です。
私もすっかり忘れてしまっていて、そういう意味では、
この言葉(理論)も、「めったにお目にかからない言葉(理論)」になってしまった感があります。
そういえば、経済学者の神野直彦先生は、
『「分かち合い」の経済学』(岩波新書)で、次のようなことを述べられていました。
『‥‥トリクルダウン理論はアダム・スミスの古き時代から唱えられている。
しかし、それには二つの前提がある。
一つは、富はいずれ使用するために所有されるということである。
もう一つは、富を使用することによって充足される欲求には限界があるという前提である。
そのため、豊かな者がより豊かになると、富によって充足される欲求には限界があるため、
使用人の報酬などを引き上げるので、トリクルダウンが働くと考えたのである。
ところが現在では、富は使用されるために所有されるわけではない。
支配する権力を獲得するために富が所有されると、トリクルダウンは生じることがない。‥‥』
賃上げがなかなか実現できない今の日本をみていると、トリクルダウンが幻想なのがよく理解できます‥‥。