町立図書館で借りてきた『プリズンの満月』(吉村昭著:新潮社)を読了しました。
NHK映像の世紀バタフライエフェクト「映像記録 東京裁判」を視聴して、
『落日燃ゆ』を再読しようとしましたが、順番を変えて、まずは本書から読むことにしました。
著者は本書の「あとがき」で次のように述べられています。
『この小説の主人公にした刑務官は、私の創造した人物で、モデルはいない。
が、プリズンを中心とした出来事は、すべて事実で、小説としてはいささか変則なのかもしれない。
時間の経過によって物事は見えてくるというが、この小説を執筆しながら、私もその観を深くした。
巣鴨プリズンが刑務所としての姿を急速に失っていったことに、
戦犯というものの問題を解く鍵があると思っている。』
この言葉どおり、主人公が創造の人物であるにもかかわらず、
迫真のノンフィクション小説を読んでいるかのようでした。
東京裁判(極東国際軍事裁判)では、A級戦犯28名がすぐに頭に浮かびますが、
次の淡々とした記述には改めて衝撃を受け、歴史認識を新たにしました。
『戦後、戦争裁判で処刑された者は、外地でのそれを合わせると911名に達し、
巣鴨プリズンでも60名が処刑され、18名が獄死、2名が自殺していた。』
「時間の経過によって物事は見えてくる」とは言いつつ、
時間の経過によって物事を見失ってしまうこともあるのかもしれません‥。
本書が若い人に読み継がれていくことを願っています‥‥。