午後4時30分頃に、短い時間ですが雨が降りました。
怠慢な私は、この慰め程度の雨で、今日の庭木への水やりを止めることにしました。
昭和11から昭和22年にかけて、4つの刑務所を脱獄した無期刑囚・佐久間清太郎を描いた小説で、
日経新聞「リーダーの本棚」で、皆川芳嗣・農林中金総合研究所理事長が、
本書を愛読書として紹介されていたのが購読のきっかけでした。
私自身は、著者の作品を読んだのは、「漂流」「戦艦武蔵」「三陸海岸大津波」「プリズンの満月」に次ぎ、
本書が5冊目となりますが、今回もスリリングで読みごたえのある作品でした。
なかでも、主人公の非凡な頭脳と行動力、驚嘆すべき生命力、彼を監視する看守たちとの心理合戦、
文章の合間合間に語られる戦前・戦後の混乱した時代背景の描写など、迫力満点でした。
さらに印象に残ったのは、文芸評論家・礒田光一さんが書かれた「解説」のなかの、次の記述でした。
『‥‥脱獄囚は社会的には〝悪〟の象徴である。
しかし、哲学的な観点から、人生そのものを牢獄と考える見方をとるならば、人間は自由を求めつつ、
たえず社会秩序という牢獄のなかに置かれている。文学的想像力の存在理由は、
こういう人間の条件のなかで、想像力による脱獄をめざしたものかも知れないのである。
かつて文学者はアウトサイダーであり、社会にそむいた存在であった。
しかし、われわれの文学は、佐久間の仮出所のころから、社会的に公認された価値観の内側に入ってしまい、
その壁に気づかなくなっているのかも知れないのである。‥‥』
う~む、まいりました。こういう読み方もこの小説はできるのですね‥。
さて次は、どの吉村作品に挑戦しようかしら‥‥?