窓の外から遠く、秋祭りの子どもたちの「提灯行列」の笛の音が聞こえてきます‥。
さて、「笛の音を聞け」ではありませんが、
遅ればせながら、村上春樹さんのデビュー作『風の歌を聴け』(講談社文庫)を読了しました。
本書で印象に残ったのは、主人公の友人である「鼠」が語る二つのセリフと、
引用された哲学者ニーチェの言葉、
そしてアメリカの作家デレク・ハートフィールド(架空の人物)の至言でした。
『‥‥みんないつかは死ぬ。でもね、それまでに50年は生きなきゃならんし、
いろんなことを考えながら50年生きるのは、
はっきり言って何も考えずに5千年生きるよりずっと疲れる。そうだろ?』
『‥‥もちろん運の強のもいりゃ運の悪いものもいる。タフなのもいりゃ弱いのもいる、
金持ちもいりゃ貧乏人もいる。だけどね、人並外れた強さを持ったやつなんて誰もいないんだ。
みんな同じさ。何かを持っているやつはいつか失くすんじゃないかとビクついているし、
何も持っていないやつは永遠に何も持てないんじゃないかと心配している。みんな同じさ。
だから早くそれに気づいた人間がほんの少しでも強くなろうって努力するべきなんだ。
振りをするだけでもいい。そうだろ?
強い人間なんてどこにも居やしない。強い振りのできる人間が居るだけさ。』
『昼の光りに、夜の闇の深さがわかるものか。』(ニーチェ)
『宇宙の複雑さに比べれば、この我々の世界などミミズの脳味噌のようなものだ。』(ハートフィールド)
「かつて誰もがクールに生きたいと考える時代があった。」‥。
本書にはこのような文章が登場します。
東京の大学生だった主人公が1970年の夏、海辺の街に帰省した際の出来事を淡々と描いた本書は、
実に「クールな小説」でした‥‥。
追記