しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「アメリカの建国精神」を学ぶ

放送大学で「アメリカ史」を学ぶ際の参考図書として、

『新「帝国」アメリカを解剖する』(佐伯啓思著:ちくま新書)を読了しました。

古書店の書棚で偶然見つけたもので、発行年月日も古いですが、十分に役に立ちました。


その一つが、アメリカの重要な思想伝統の「リベラリズム自由主義)」についての記述です。

・ヨーロッパとアメリカにおいて、リベラリズムの意味内容が異なっている。

 特にイギリスにおいては、リベラリズム自由主義)は、「マンチェスター学派」の唱えた

 市場経済の自由競争、自由貿易などのイデオロギーと結びついたある特定の階級的利益を想起させる。

 それは、より上層の貴族的精神(ノブレス・オブリージュ)をもった「保守主義」とも、
 
 また労働者層を中心に社会的平等を訴える「民主主義(社会民主主義)」とも異なっている。

・ところが、そもそもヨーロッパ的な意味での階級をもたないアメリカにあっては、

 個人の財産の尊重や経済的な自由競争、自助努力や勤勉の精神などは、

 ある特定の階層のエートスなのではなく、建国以来の「アメリカ人」なるものの

 典型的な倫理にほかならない。つまり、イギリス人がリベラリズム自由主義)と呼んだものは、

 アメリカの建国の精神そのものであった。

・その結果、その建国の精神に常に立ち返ろうとするアメリカの「保守主義」は、

 事実上、イギリスで言う「リベラリズム自由主義)」にきわめて接近することになる。


もう一つは、その「アメリカ建国の精神」についての記述です。

アメリカが西欧から受け継いだもの、それはギリシャやローマの古典世界をモデルにした政治思想や

 哲学的思考と、プロテスタントキリスト教の精神であり、西欧から切断されるもの、

 それは封建体制や階級構造である。アメリカの建国の精神を次の三つに集約する。

 ①共和主義(リパブリカズム)の精神、②自由主義の精神、⓷ピューリタリズム、がそれだ。


以上、備忘録としてこの日記に残しておくことにしました。

佐伯先生らしい、分かりやすい文章であったことも付言しておきます。

さて、いよいよ「アメリカ大統領選挙」が目の前に迫ってきました。

報道に接しても、お互いの弱点を指摘するばかりで、肝心な政策論争がおろそかになっているみたいです。

いまこそその「建国の精神」を思い起こすことが必要なのかもしれません‥‥。