今月15日の日経新聞に、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏が、
「ウクライナは勝利している~人々の記憶が国家の礎に」というタイトルの論評を寄稿されていました。
この論評で圧巻なのは、後半の次のような記述です。
少々長くなりますが引用させていただき、この日記に書き残しておこうと思います。
『‥‥この戦争がどうなっていくかは、予測がつかない。
だが極めて重要なのは、ウクライナの勝利は既に決定的で、覆されることはないという点だ。
戦争はより多くの領土を占領したり、都市を破壊したり、命を奪ったりした側が勝つわけではない。
政治的目的を達して初めて勝利と言えるのだ。
ロシアのプーチン大統領はウクライナという国家の破壊を主たる目的としてこの戦争を始めたが、
達成できないのは明らかだ。
プーチン氏はいくつもの演説や論文で、ウクライナは真の国家ではないと主張してきた。
21年7月に発表した論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」の趣旨も同じだ。
ウクライナはロシアを弱体化させようとたくらむ外国勢力が擁立した、偽りの存在だという。
プーチン氏が戦争を始めたのは、ウクライナという国家は存在せず、ウクライナ人は実際にはロシア人で、
きっかけさえあれば喜んで母なるロシアの一部になるということを世界に証明するためだった。
このプーチン氏の妄想と野心のために、今後どれだけの命が失われるかわからない。
だが世界中に明らかになった揺るぎない事実は、ウクライナが本物の国家であり、
ウクライナの人々はロシアからの独立を守るためなら何が何でも戦うつもりだということだ。
国家は土地や民が流す血でできているわけではない。
人々の心に刻まれた様々な物語や姿、記憶によってつくられている。
この戦争が今後数カ月でいかなる展開をみせようとも、
ロシアの侵略と残虐行為とウクライナが払った犠牲は、
今後、何世代にもわたりウクライナの愛国精神を支える礎(いしずえ)となるだろう。』
はぃ、「ウクライナの勝利は既に決定的で、覆されることはない」というご指摘に、とても勇気づけられます。
そして、「国家は人々の心に刻まれた様々な物語や姿、記憶によってつくられている」というご指摘も、
国家とはなにか、愛国精神とはなにかについて、改めて学ぶ機会になりました。
報道によると、米国のトランプ、ロシアのプーチン両大統領が、
再び対面の会談を開いて、ウクライナ和平への打開策を探ることで合意したそうです。
長距離巡航ミサイル「トマホーク」のウクライナへの供与に逡巡しているトランプ大統領は、
プーチン大統領にこれ以上の時間稼ぎを許さず、終戦への強い圧力をかけ続けてほしいものです‥‥。