しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

ふるさとの話をしよう

先日(7月27日)、この日記に、
JR予讃線の海回りを走る観光列車「伊予灘ものがたり」のことを書きました。
書いた後、昭和62年9月、愛媛県市町村振興協会が発行する行政誌に、
「ふるさとの話をしよう」と題したエッセイを投稿したことを思い出しました。

投稿したお礼にいただいた行政誌そのものは、残念ながら紛失しましたが、
自分が執筆した文章をコピーしたものは大切に保管していました。
この際、この日記にその内容を移し替えておこうと思います。

昭和62年9月といえば、私は31歳。
今、読み返してみると、生意気な文章で少々気恥ずかしくもありますが、
当時、この文章を母に見せると、とても喜んでくれたことを覚えています。

 ・6月になって最初の日曜日、親子三人連れで双海町上灘に出かけた。
  6月とはいえ真夏のような日ざしが照りつけるなか、
  海辺でひととき子どもと水遊びを楽しんだが、
  済みきった空と海に囲まれてゆっくりと休日を家族で楽しんだのは、
  随分久しぶりのことである。

 ・その双海町は、私の母の生まれ故郷である。
  子供の頃、夏の夕べ、渚で花火を楽しんだこと、汽車の窓から見た家々の屋根や
  軒先に掲げられたまるでピンクのじゅうたんのような干しエビの風景など、
  この年齢になっても鮮明に記憶に残っている。

 ・今では、渚は消え、海岸添いを国道378号線が走り、国鉄内山線の開通によって、
  予讃線海岸回りは、日に数本しか汽車が走らない。時代の移り変わりとはいえ、
  随分寂しく、しかも静かな町に変わったように思う。

 ・事実、町自身も、最近では過疎と産業不振の課題を抱え、
  上灘町と下灘村の合併時1万1千人近かった人口も、
  一年に百人の割合で町外への人口流出が相次いだと聞き及んでいる。

 ・地域を取り巻く環境は、二十一世紀を目前にして、
  情報化、国際化、高齢化、技術の高度化など急速に変化してきているが、
  さらに今般の円高問題や貿易摩擦等の要因により、
  産業構造にも大きな変革が求められている。

 ・その一方で新たな内需拡大、民間活力の導入などをテーマにした、
  まちづくりやむらおこしをはじめとする地域の活性化が求められている。
  今まさに地域活性化のため、地域間で「知恵比べと競い合いの時代」が
  始まっているということができる。
  そしてこの時代の流れに乗り遅れると、
  十年は立ち遅れるとまでいわれているのである。

 ・幸いにして双海町では、二十一世紀に向けた“町づくり21”構想を掲げ、
  町の個性を生かした、住めて誇れる魅力ある町づくりを推進するとともに、
  夏を双海を代表する海をテーマにした
  「ふたみの夏まつり」という一大イベントを昨夏から実施するなど、
  町民総ぐるみで積極的にまちづくりに取り組んでいると聞く。
  本当に素晴らしいことだと思う。

 ・全国の地域活性化の成功事例は、自分たちの地域の「自慢」や「誇り」
  (例えば、歴史、自然、環境、文化、習俗、言葉など)を資源として
  それをテーマにしているところにあるが、まちづくりの原点は、
  つまるところ自分の生まれ育った故郷を愛する人がいて、
  その人が「何か」に挑戦するところから始まるのであろう。

 ・私も双海町をこよなく愛する一人として、町の発展を祈らずにはいられない。
  そしていつまでも、母のようにあたたかく迎えてくれる
  “ふるさと”であってほしいと願うものである。

ところで、伊予郡双海町は平成17年4月、
平成の大合併伊予市と合併し、伊予市双海町となりました。
自治体の名称は変わっても、「まちづくりの原点」は変わらないと思います。