『指導者とは』
(リチャード・ニクソン著、徳岡孝夫訳:文春学藝ライブラリー)を読了しました。
読み終わってみると、本は付箋だらけになっていました。
それほど感銘を受けた箇所が多かったわけなのですが、
この日記には厳選して、次の5個所を書き残しておきたいと思います。
『私が近付きになった指導者の多くは、性格の一面にやさしさを持っていたが、
だからと言って「やさしい人」と呼ぶのは誤りだろう。
やさしいだけの人は、ほとんどの場合、権力の行使には向かない。
指導者というのは、事を為すに当たって、
ときには獣的な非情さを必要とするものである。
自己の職責の非情さにたじろいたり、感情に溺れるようなことがあっては、
一流はおろか二流、三流の指導者にもなれないだろう。』
『私に向かって、マッカーサーはこう言った。
「司令官にとって最も大切なことは、5パーセントの重要な情報を、
95パーセントのどうでもいい情報から見分けることだ。」』
『指導者にとって、時間ほど大切なものはない。
つまらぬことに時間を浪費すれば、破滅につながる。
だから、何を自分で処理し何を部下にやらせるかを決め、
委譲する部下を選ぶことが最も大切な仕事の一つになる。
そして優秀な人材を集めると同時に、
何らかの理由によって適当でない人物を取り除くことができなければならない。』
『とくに大官僚組織が関係している場では、
首切り屋の存在は別の理由でもきわめて大切になってくる。
私の知るかぎりでは、指導者に忠誠心を抱く官僚は寥々たるもの。
自分の信じる正義のために献身するものがほんの少しいるだけで、
大部分の官僚は自己の利益だけを考えている。
他人を蹴落としての昇進か、現在の職を安全に維持する保身しか眼中にない。
そして組織にとって最悪なのは、安全を与えすぎることである。』
『私はメンジスほど規則的にはやらなかったが、
危機をかかえた多忙な日々にも、やはり同じような読書をした。
広い視野を持つためには、指導者は現実から一歩退(さが)らねばならない。
むしろ現実の危機が最も切迫した瞬間に、一歩退ることが最も必要になってくる。
そんなときには、日ごろよりいっそう広い視野が要求されるからである。
政治家になりたいがどんな勉強をすればいいかと若者に聞かれるたびに、
私は政治学はやらずに歴史、哲学、文学を十分に読み、
それにより自己の精神を柔軟にし視野の地平線を広げようと勧める。
政治についての具体的なことは、いずれ体験によって学べばいい、
だが、読書の習慣、思考の訓練、きびしい分析の技術、価値観、哲学の基礎などは、
政治家たらんとするものが若いときから吸収し、
その後も吸収し続ける以外、どうにもならないのである。』
いゃあ〜、それにしても、この本に出合わなければ、
ニクソン元大統領のことを誤解したまま、生涯を終えるところでした。
ウォーターゲート事件により任期途中で失脚したため、
それまで私は、ニクソン元大統領にダーティなイメージしかありませんでした。
この本を読んで、ベトナム戦争からの完全撤退や中国との国交樹立などは、
「偉大な指導者」でなければ実現できなかったことをようやく理解した次第です。

- 作者: リチャードニクソン,Richard Nixon,徳岡孝夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/12/18
- メディア: 文庫
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