今日5月18日は「ことばの日」です。
これからも言葉の正しい使い方に意を用いながら、
この日記を書いていきたいと思います。
さて、その「ことばの日」の日経新聞「私見卓見」欄に、
「ソーシャル・キャピタル」という分野を研究されている稲葉陽二・日本大学教授が、
『「企業風土」を言い訳にするな』という「私見」を寄稿されていました。
ここでいう「ソーシャル・キャピタル」とは、通常の生活では人と人との絆を示し、
会社内の「ソーシャル・キャピタル」を「企業風土」として説明されています。
この前提のもとで稲葉教授は、
「東洋ゴム工業による免震ゴム性能偽装」、「三菱自動車の燃費データ改ざん」、
「東芝の不正会計」など、大企業の不祥事がいつまでたってもなくならず、
また、その不祥事が起きるたび出てくるのが「企業風土」というキーワードで、
企業が設置した第三者委員が「企業風土に問題があった」と指摘したり、
経営者が「企業風土に流されてしまった」と反省の弁を述べたりするが、
「この企業風土という言葉が言い訳に使われていないだろうか」
と問題提起されています。
そして、会社内のソーシャル・キャピタル、すなわち企業風土は特殊であり、
構造をきちんととらえて対処しないと不祥事はいつまでもなくならないとして、
次のように述べられています。
『会社内のソーシャル・キャピタルの最大の特徴は、
トップが自由に情報やネットワークを操作できる点にある。
情報を下に伝えてもいいし、伝えなくてもいい。
下から上がってきた情報をみんなで共有してもいいし、無視してもいい。
少人数の「お気に入りの人たち」だけで会社の中枢を固めたり、
「たこつぼ化」する専門家集団を放置したりすることもできる。
これらの積み重ねがまさに企業風土となっていく。
つまり、企業風土というのは勝手に存在しているものではなく、
トップが作り上げるものなのだ。
身近なところで考えれば、部長が代われば部の雰囲気はがらっと変わるだろう。
そうでなければその部長は仕事をしていない「おかざり」といってもいい。
「企業風土が変えられなかった」というようなトップの言い訳は通用しない。』
さらに、稲葉教授は、
東証1部上場の100社以上の閉鎖性(社長の生え抜き度合いなど)を調べたところ、
より閉鎖的な企業ほど不祥事が多かったとして、次のように述べられています。
『トップは風通しの良い組織をつくるよう努力すべきだ。
それは社外取締役を増やすといった制度上の問題だけではなく、
身近な人の配置やコミュニケーションのあり方も見直すことである。
企業は資本主義の要であり、社会の公器である。
トップは企業風土という言い訳に逃げる前に、
自分ができることを見つめ直してほしい。』
う~む、なるほど……。
この記事を読んで思ったのは、企業風土というのは、
各部各課に配置された管理職が、いかに風通しの良い職場をつくっていくかに
尽きるのではないか…ということです。
その積み重ねがきっと企業風土になるのでしょうね…。
現に、私のこれまでの経験では、
そういう風通しの良い職場の管理職のもとでは、自由闊達に議論ができて、
職員も生き生きと仕事をしていたように思います。
もっとも、そういったコミュニケーション能力のある管理職を育成していくのは、
トップの役割によるところが大きいのも確かです。
ということはやはり、稲葉教授のご指摘のとおり、
トップは不祥事が起こった時に、企業風土を言い訳にはできないのですね…。
けだし、「卓見」だと思います。
ちなみに、陽明学者の安岡正篤先生の言葉に次のようなものがありますが、
私はこれが、企業・官公庁を問わず、理想の組織風土だと思っています。
・互いに明朗闊達なるべし
・盛んに研究討論すべし
・人に対して謙虚なるべし
・事に当たって正義を立つべし
・自ら処するに敏なるべし