しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

残り「二本の矢」

黒田日銀総裁が、今月12日に、
「読売国際経済懇話会」において講演された内容が、日銀HPで公開されています。
講演テーマは、「量的・質的金融緩和」というタイムリーなもので、
今回の日銀の金融政策が分かりやすく解説されていました。

「量的・質的金融緩和」の基本的な考え方やその効果などについては、
黒田総裁の講演を待つまでもなく、既に丁寧な報道がマスコミでなされているところですが、
「本当にできるのか」、「そこまでやっていいのか」といった心配の声や、
金融政策と政府の他の政策との関係について、
「金融政策運営を巡る論点に対する答え」として、今回の講演の中で触れられていました。
黒田総裁ご自身が語られているということで、大変参考になりました。

まず、質と量の実現について
 Q 長期国債残高を年間50 兆円積み増すという新たな買入れ計画は、
  市場参加者の常識を超える巨額なものだが、日銀による買入れが実務的に可能か。
 A 基本的には、幅広いゾーンの国債を入札方式によって買入れる以上、可能。
  必ず実現する。

次に、財政ファイナンスとの関係について
 Q 質的・量的金融緩和のもとで、日銀が大規模な国債買入れを行うとなると、
  財政赤字の穴埋めをするのではないか。
 A 「量的・質的金融緩和」による長期国債の買入れは、
  金融政策上の目的で日本銀行自身の判断で行うものであり、財政ファイナンスではない。
   また、日本銀行による国債買入れが増加する中、
  それが、財政ファイナンスではないかといった議論をそもそも惹起しないためにも、
  政府が、今後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、
  財政構造改革を着実に進めていくことは極めて重要である。

最後に、為替相場への影響について
 Q 最近の円安方向の動きを受けて、金融政策と為替相場の関係に関する議論も聞かれるが。
 A 日銀が、為替をターゲットとして金融政策を運営することはない。
  日銀の金融政策は、あくまで国内物価の安定を目的としている。
   確かに、金融緩和を行った場合、その国の為替レートは下落する傾向があるが、
  これはあくまで、他の事情を一定と仮定したうえでの一般論。
   例えば、金融緩和を通じて、さらには、適切な財政政策や成長戦略を通じて
  経済の成長力が高まれば、当然のことながら、その国の通貨は逆に上昇する可能性もある。

ところで、日経電子版では、
『物価が上がれば、賃金も上がるのか。
 日銀の黒田東彦総裁は12日、都内で講演し
 「物価と賃金の変動は連動している。経済全体が拡大するなかで、賃金も雇用も回復する」
 と発言した。』と報道されています。

しかし、12日の講演録では、
『政府が「実需」を作り出し、
 消費・投資の拡大を通じて賃金・雇用を増加させることができれば、
 実体経済が改善する中で、物価上昇率が徐々に高まっていくという好循環が生まれる。』
となっています。

あれっ?おかしいな…。これって、順序が逆なのではないでしょうか?
物価上昇が先か、それとも賃金・雇用の増加が先か?
なんだか訳が分からなくなりました。

いずれにしても、「三本の矢」のうち、
残り「二本の矢」を着実に実行することが重要なことは間違いないみたいです。