『消費税 政と官との「十年戦争」』(清水真人著:新潮社)を読了しました。
自民党・小泉内閣時代から民主党・野田内閣時代までの消費税を巡る政界の動きを、
迫力満点で読者に伝える、著者渾身の作品だと思います。
この本の中で、強く印象に残っていることが二つあります。
その一つは、消費税増税に政治生命を懸けた与謝野馨さんの「信念と執念」です。
本の中では、「深慮遠謀」という言葉が使われていましたが、
私は、「信念と執念」という言葉がより適切のような気がしています。
この人がいなかったら、おそらく今回の消費税増税は実現しなかったと思います。
与謝野さんといえば、
自らの著書の中で、祖母である、明治の詩人・与謝野晶子の
『劫初より つくりいとなむ殿堂に われも黄金の釘一つ打つ』という歌を引用されていました。
人によって、与謝野さんに対する評価は、上下左右に分かれると思いますが、
私はこの歌にあるように、
与謝野さんは、後世のために「黄金の釘を打たれた」と高く評価しています。
そして、もう一つは、
谷垣自民党総裁と野田総理を結びつけた、
大平正芳さんという希有の政治家の存在です。
保守本流「宏池戒」の流れをくむ谷垣さんと、大平さんに私淑する野田さん。
一般消費税導入に取り組み、衆参同日選の最中に急死した大平さんの意思が、
この二人によって受け継がれたのは、単なる偶然ではないように思いました。
清水真人さんの著作には、この本以外にも、
『官邸主導〜小泉純一郎の革命』(日本経済新聞社)
『経済財政戦記〜官邸主導小泉から安倍へ』(同上)
『首相の蹉跌〜ポスト小泉 権力の黄昏』(同上)
という、綿密な取材で描いた「力作」があります。
「事実は小説よりも奇なり」
清水さんの一連の本を読むと、
政治の世界が「筋書きのないドラマ」であることを、とことん実感できます。
- 作者: 清水真人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/08/23
- メディア: 単行本
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