「ムダが書籍の未来をつくる」という題の論評を寄稿されていました。
この論評で京極さんは、次のようなことを述べられていました。
『世の中にはハードカバーが好きな人が一定数いる。彼らは本をいわゆる情報のみとは捉えていない。
そうした人々が、実は読書文化の底を支えている。
装丁だとか紙質だとか、花ぎれ(背表紙の天地に入れる布)やスピン(ひものしおり)の色だとかに、
いいものを求めている。』
『本作りの目的は、ムダをなくすことではない。
そもそも小説自体が読まなくても困らないもので、人生のムダだともいえる。
本作りとはムダを排除するのではなく、むしろ取り込んでいくものではないか。』
へぇ~、そうなんですか‥。
私は今日、初めて「花ぎれ(花布)」と「スピン」という言葉を知りました。
年金生活者になってからは、古書店で本を買うことが多くなりました。
それでもたまには新品のハードカバーを書店で買うことがあります。
そしてその本を家に持ち帰り、装丁をながめ、初めてページをめくるときの充実感や幸福感は、
何とも言えないものがあります。
「ハードカバーが好きな一定数の人々が、実は読書文化の底を支えている」‥。
書棚に並んでいるハードカバーが、なんだか急に愛おしくなってきました‥‥。