「新訳・フランス革命の省察」(エドマンド・バーク著:PHP出版社)を読了しました。
この本の著者エドマンド・バークは、「保守主義の父」と呼ばれている人です。
今から221年前、フランス革命の初期段階に書かれた本ですが、
フランス革命の顛末とその後のナポレオンの出現(軍人による独裁)を
予言したような内容になっています。
この本の中には、たくさんの名言・箴言がちりばめられていますが、
私が特に感銘したのは、少々長くなりますが、次の記述です。
『「正しい目標をめざすかぎり、社会の変化は抜本的であれば良く、
また急速であればあるほど良い」という発想は、次の四つの前提のうえに成り立つ。
①人間は、社会のあり方を望ましくする方法論を適切に考案する理性、
およびそれを確実に実現してゆく能力を持っている。
②社会を望ましくする方法論が二つ以上存在する場合、
人間は個人的な利害関係や感情にとらわれることなく、どちらが良いかを冷静に判断できる。
③上の二つの前提は、社会全体で成立している。
言い換えれば、みずからのあり方を望ましくしようとすることにかけて、
社会は首尾一貫した単一の意志を持っていると見なして構わない。
④社会のあり方を変えることに伴うコストや副作用は、
変化のスピードを上げたからといって顕著に増大することはない。
国家を構築したり、そのシステムを刷新・改革したりする技術は、
いわば実験科学であり「理論上はうまくいくはずだから大丈夫」という類のものではない。
現場の経験をちょっと積んだぐらいでもダメである。
〜(中略)〜
政治の技術とは、かように理屈ではどうにもならぬものであり、
しかも国の存立と繁栄にかかわっている以上、経験はいくらあっても足りない。
もっとも賢明で鋭敏な人間が、生涯にわたって経験を積んだとしても足りないのである。
だとすれば、長年にわたって機能してきた社会システムを廃止するとか、
うまくいく保証のない新システムを導入・構築するとかいう場合は、
「石橋を叩いて渡らない」を信条としなければならない。』
なんだか、どこかの国の政府・与党を厳しく叱責しているような内容です。
「改革」や「革命」、あるいは最近の「維新」といった言葉は、
人々の耳に心地よく聞こえてきますが、
今の世の中が、「四つの前提」が成り立っている社会であるかどうかを
よく吟味する必要があるのではないかと、この本を読んで痛感した次第です。
現代用語でわかりやすく書かれた本ですので、是非一読をお薦めします。
- 作者: エドマンドバーク,Edmund Burke,佐藤健志
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2011/03
- メディア: 単行本
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