今日の日経新聞「危機と日本人」は、
宗教家で哲学者、山折哲雄先生の「現代の母子像〜カンガルー型かオンブか」でした。
山折先生の記事は、いつ読んでもとても勉強になります。
今日の記事も、いいことが書いてありましたので、
少々長くなりますが、引用してこの日記に残しておきたいと思います。
『〜(中略)〜 さて、そのオンブ・スタイルであるが、
背中にくくりつけられている赤ん坊の身になってみれば、
いつもおっ母さんの汗ばんだ首筋がみえていたし、
うしろに束ねた髪が乱れているのを眺めていた。
やがて退屈して顔を上げれば青空が広がっている。
首を回せば、こんどは道行く人や車の流れ、屋根をつらねる店のにぎわいを通して、
いつのまにか世間というものにふれていたのではないだろうか。
おっ母さんの背中にのっかっているからこそ、
いわず語らずのうちにそのような展望を
胸のうちにたたみこむことができていたのではなかったかと思う。
もしもそうだとすると、
近ごろのハンモック型、
カンガルー・スタイルのママと赤ちゃんの場合はどういうことになるのだろうか。
ママの視界には、いつも赤ちゃんの全身が入っている。
赤ちゃんの視線もいきおい、
上から見下ろすママの表情だけに注がれるような具合になっている。
ママ―赤ちゃんの対面関係が至近距離で濃密になっている。
濃密にはなっているけれども、
その分、赤ちゃんの視界からは自然や世間の姿が遠のいてしまっているのだろう。
自然との関係、世間との関係をからだではかる感覚が
育たない状況になっているのではないだろうか。
今日、われわれの周囲で観察される不安定な母子関係も
そうした育児のあり方と深いかかわりがあるような気がしてならない。』
子育て真っ最中の私の娘は、今時のカンガルー・スタイルですが、
私の妻は、長いおんぶ紐で孫娘を背中にしょって、家事をそつなくこなしています。
そして、妻の背中に背負わされた孫娘は、いつの間にか気持ちよく眠ってしまいます。
もっとも、1歳と3か月になった孫娘は
とても重くなって、妻も背負うことがきつくなったようです。
そういえば、
私の心の奥の遥か彼方のかすかな記憶をたどれば、
山折先生が指摘されるような、母の背中越しに見た青空があるような気がします…。
果たして孫娘は、大きくなったらどのような原風景を思い出すのでしょうか……。