TPP交渉参加に関して、
世論調査では50%以上の人が「日本も交渉に参加すべきだ」と回答しているのに対して、
国会議員の半数近くが反対の立場をとっているのはなぜか…。
特に、TPP反対の中心は農業関係者だが、
農業部門が縮小しているのに、その政治力が衰えないのはなぜか…。
8月28日の日経新聞「経済教室」で、
石川城太一橋大学教授が、
政治学者マンツー・オルソン氏が唱えた「集合行為論」を用いて、
その理由を分かりやすく解説されていました。
『仮に、TPPで利益を得る人が1億人いて、その利益の合計が10兆円、
一方で損失を被る人が200万人いて、その損失の合計が8兆円としよう。
この場合、経済全体としては差し引き2兆円の利益になるので
TPPを進めた方がよいはずだが、実際にはなかなか実現しない。
それは得するグループの利益が1人あたり10万円なのに対し、
損するグループの損失は1人あたり400万円にもなるからだ。
〜(中略)〜
ポイントは、
経済全体でみたネットの利益はあっても恩恵は薄く広くしか行き渡らないのに対して、
損失は少数の人に集中する点にある。
損失を被るグループは、1人あたりの損失額が大きいので、
国会議員への陳情や献金といったロビー活動を積極的にすることで、大きな政治力を持つ。
仮に損失額が変わらず、損をする人数が減れば、1人あたりの損失額はさらに大きくなる。
つまり損をする人が少なくなるほど、ロビー活動の誘因は一層大きくなり得る。』
なるほど、
だから国会議員の先生方は、損失を被るグループ側に立つことで、
献金や票を集めようとするわけですね。
その行動も理解できなくはありませんが、
国会議員の先生方は、何よりも国益を優先して判断をしてほしいものです。
もっとも、そのような「国士無双」は、選挙に当選することが難しいのかもしれません。