しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

異次元緩和と素朴な疑問

以前から、日銀の量的・質的緩和の効果に関連して、素朴な疑問が2つありました。
その1つは、大胆な金融緩和にもかかわらず、どうして長期金利が上昇するのか?
もう1つは、大胆な金融緩和でデフレから脱却したら、本当に賃金は上昇するのか?

この2つの疑問に対して、
今月2日の日経新聞「経済教室」が、「答え」を用意してくれたような気がします。
当日の「経済教室」のタイトルは、
『「異次元緩和」から3か月㊤ 株安・円高、外的要因の影響』で、
執筆者は、伊藤隆敏東京大学教授でした。

「答え」が書かれている箇所を引用させていただきます。
まずは、長期金利について。

『量的・質的緩和の発表時には、
 イールドカーブ(利回り曲線)全体で金利の低下を目指す、としたにもかかわらず、
 金利は上昇に転じており、しかも5〜10年物国債金利は乱高下しているので、
 失敗だった、という意見もある。
 量的・質的緩和が、長期金利にどのような影響を与えるのかについては、
 当初から見方が割れていた。金融緩和は通常、金利を引き下げるように働く。
 しかし、今回の金融緩和が「デフレ脱却」を目的としているので、
 政策が成功すると、名目金利は上昇するはずだ。
 したがって、名目長期金利が当初は下落しても、その後上昇に転じることは予想できた。
 問題はその上昇スピードである。
 たとえ名目金利が上昇しても、期待インフレ率の上昇が金利上昇を上回る限り、
 名目金利から期待インフレ率を引いた実質金利は低下するので景気刺激的であり続ける。』

次に、賃金について。

『量的・質的緩和政策でデフレ脱却に成功すると、インフレ率が上がる。
 そのなかで、名目賃金が上がらなければ、庶民の生活が苦しくなる、
 というのは、わかりやすい批判である。
 しかし、これまで15年のデフレと景気低迷のなかで、
 賃金やボーナスが物価下落よりも下がった業種も多くあった。
 物価が1%下落のもとで賃金が3%下がる場合と、
 インフレ率が2%になって名目賃金が全く上がらない場合は、実質賃金で考えると同じである。
 賃金やボーナスの主要な決定要因は、期待インフレ率と労働生産性の上昇である。
 業績の良い会社が、2%インフレ目標を確信したときには、
 必ず賃金の上昇につながると思われる。
 業績の良い会社を増やすためには、
 デフレ脱却とならんで、規制改革に基づく成長戦略の速やかな実行が重要である。』

はぃ、ありがとうございました。なんとなく理解できたような気がします。

ただ、伊藤教授の論考を読んだ後、新たな疑問が生じました。
伊藤教授は、「現在のところ、株高による資産効果から
消費を中心に多くの景気指標には明らかに改善の傾向がみられる。
4〜6月期の国内総生産(GDP)も
従来予想より高くなるとの見通しが相次いでいることなどからみて、
金融政策および経済政策一般は、正しい方向へ向いていると言える」
と述べられています。

う〜ん、本当かな?
今月からは、全国の多くの地方公務員の給与が削減されます。
しかも削減額は、生半可な額ではありません。
そのようななかで、期待インフレ率は上昇するものなのでしょうか?
明らかに、景気に対してマイナスの影響を与えるものと思います。

この疑問に対する「答え」は、どこを探しても見つけることができません。