『家族の衰退と消費低迷』という、とても勉強になる論考の連載が続いています。
山田教授によると、日本の個人消費は、その大部分が「家族消費」、
つまり豊かな家族生活のための消費で成り立っているけれども、
その消費需要は未婚化によって激減しているとのことでした。
具体的には、次のような解説がありました。
・石油危機直前の1974年には婚姻数は約110万組で、
「豊かさを目指す家族」がそれだけ増えたが、
2015年には約63万5千組と、半分近くに減っていること。
・世帯数は増えているが、増えているのは家族消費をしない高齢者世帯であること。
・つまり、結婚や同棲であれ、1人暮らしであれ、
新しい世帯を形成する力が徐々に弱くなっていること。
・この大きな要因は、バブル崩壊後、経済の構造転換が進み、
非正規雇用が増えたこと。
自立して生活したくてもできない若者が増えたこと。
・この結果、戦後型家族を形成できる若者とできない若者に分裂し、
前者は主に正規雇用男性とその妻で、
従来同様、家族で豊かな生活を目指して家族消費を行うが、
その絶対数は減少しているため、
こうした家族をターゲットにする消費産業の市場は徐々に縮小すること。
う~む、なるほど……。ここまで読んで、
最近、疑問に思っていたことの答が見つかったような気がしました。
その疑問とは、私の地元では三越松山店が
売り場面積の縮小を検討しているとの報道がありましたが
なぜ「百貨店という業態」の売上不振が続いているかということです。
つまり、日本が高度経済成長の真っ只中にあった頃、
京都の百貨店に家族四人で行くのが楽しみでした。
「レストランで私はオムライスを食べ、弟はホットケーキとソフトクリームを食べ、
屋上のメリーゴーランドに乗って遊ぶ。」
家計は裕福ではなかったので、百貨店の商品には手が届かなかったけれど、
母はそうした陳列棚の商品を見ているだけで嬉しそうでした。
百貨店での家族消費が期待できなくなったことは、
山田教授のさきほどの論考で理解できましたが、
それに加え、「家族で百貨店に行くこと、それ自体の楽しみ」が
なくなっていることも一つの要因のような気がします。