今月14日付けの「溜池通信」の特集は、
『地政学リスクを考える』というタイトルでしたが、
「地政学」のポイントや「リスク」と「不確実性」の違いが
分かりやすく解説されていて、とても勉強になりました。
まず、「かんべえ」さんこと、双日総合研究所の吉崎達彦さんは、
地政学は「地図を使って考える」という点に特色があり、
そのポイントは、①「国家」の立場から、
②「地理」という人間が変えられないものを前提に、
③「戦略」を考える学問で、④特に「戦争」に関する思考が中心になる、
と解説されていました。
また、「リスク」と「不確実性」については、
経済学において、この二つを分けたのはフランク・ナイトの功績とのことで、
前者は計算できる確率的事象、後者は確率を計算できない事象であり、
東京直下型地震など計算できるリスクは、実はそれほど怖くないけれど、
計算できない不確実性は、例えば「3/11震災」直後のように、
非常に怖く感じられると解説されていました。
そして、経済学者ナイトが偉大であった点について、
次のように述べられていました。
『経済学者ナイトが偉大であった点は、
つまるところ人間社会において不確実性は排除できないから、
経営者はこれに対処しなければならない。
そして利潤とは、不確実性に対処することに対する報酬である、
と喝破したことである。
確かに企業を取り巻く環境は、計算できることばかりではない。
かならずどこかに「不確実性」があって、
そこはアニマル・スピリッツで乗り越えていかなければならない。
端的に言えば、どこかで迷いを断って「エイヤア」と蛮勇を奮う必要がある。
この点、「先行き不透明性」を強調することが多い最近の日本企業には、
反省すべき点があるのではないだろうか。
「地政学リスク」という言葉も、行動しないことの便利な言い訳として
使われている面が無きにしも非ずだと思う。』
この記述のなかで印象的なのは、
「利潤とは、不確実性に対処することに対する報酬」という言葉です。
やはり経済活動を行っていくうえでは、
「アニマル・スピリット」が大切なのですね……。
ひるがえって、私のこれまでの人生はどうだったのか…。
計算できる「リスク」に対しては、あまり考えずに準備をしてこなかったし、
計算できない「不確実性」に対しては、
いたずらに考えすぎて、怖がってばかりいたように思います。
そして、最近、深刻な問題として考えているのが「長生きのリスク」です。
こちらも、「地政学リスク」という言葉ように、
「行動しないことの便利な言い訳」のように、
何の準備もしないまま、私は使ってしまいそうな気がしています。