黒田日本銀行総裁が昨年12月26日に、日本経済団体連合会審議員会において、
『人手不足を越えて~持続的経済成長への展望』と題して講演されたその講演録を、
日銀のHPで読みました。この講演において黒田総裁は、
「深刻化する人手不足が日本経済の成長制約になるのではないか」といった悲観論に対して、
次のように述べられていました。
『過去の経験によれば、日本経済は、人手不足という困難を乗り越えていく過程で、
個々の企業が生産性を高め、経済全体の成長力を高めてきました。
人手不足以外にも、わが国経済は、「成長制約」といわれていたものが
実は制約ではなく、新たなフェーズの入り口であったことを、何度も証明してきました。
1970 年代に二度の石油危機が日本を襲ったときは、
資源不足がわが国経済の成長を制約することが懸念され、
「日本はゼロ成長に陥る」といった悲観論も広がりました。
実際には、多くの企業による積極的な省エネ投資により、
わが国は、世界で最もエネルギー効率の高い経済に変貌し、こうした困難を見事に克服しました。
また、最近では、東日本大震災の発生後、
電力不足やサプライチェーンの断絶が経済活動の制約になると心配されました。
しかしながら、多くの企業は、自家発電設備の増設や生産拠点の移転・再構築に取り組み、
驚くべき速さで生産能力を回復しました。
このように、経済は、短期的には制約と思われることがあっても、
それを乗り越えていくことで成長していくのだと思います。
そして、こうした困難を克服する原動力は、
いつも皆様方企業の前向きな取り組みでした。今回の人手不足についても同様です。
私は、わが国企業の問題解決能力に全幅の信頼を置いています。』
そして、そのうえで
・限られた人材を有効に活用するためには、他社に一歩先んじて行動し、
目の前のビジネスチャンスを着実に掴むことが重要であること
・企業の成長力を一段と高めていくためには、それなりの賃金を払ってでも
優秀な人材を確保していくことも必要であること
この二つを強調されていました。
黒田総裁のお話は、企業に向けてのものでしたが、人についても、
様々な制約を乗り越えることによって成長していくこと、
困難を克服する原動力は前向きな姿勢であることは、変わらない真理ではないかと思います。
ただ、私はというと、このことが一番欠けているのではないかと深く反省した次第です。