『文章読本さん江』(斎藤美奈子著:ちくま文庫)を読了しました。
結論から先に言うと、読んでいてとても痛快な本でした。
「文章読本」とは、「文章」とはいったい何なのか、著者は次のように述べられていました。
『原点にもどって考えてみよう。文章読本とは、はて、何なのか。
私はこういうことでないかと思う。文章とは、いってみれば服なのだ。
「文は人になり」なんていうのは役立たずで、ほんとうは「文は服なり」なのである。
こんなことはいまさら私がいうまでもなく、古代ローマの時代から指摘されていたことだった。』
『文は服である、と考えると、なぜ彼らがかくも「正しい文章」や「美しい文章」の研究に
血眼になってきたか、そこはかとなく得心がいくのである。
衣装が身体の包み紙なら、文章は思想の包み紙である。』
『文は服だっていったじゃん。服だもん。必要ならば、TPOごとに着替えりゃいいのだ。
で、服だもん。いつどこでどんなものを着るかは、
本来、人に指図されるようなものではないのである。』
文章を書くのも服を着るように、人に指図されるようなものではないと言われると、
なんだか肩の荷が下りるような気もしますが、やっぱり少し不安でもあります。
そういう意味では、著者が分析された、次のような「文章読本の教訓」を読むと、
逆に安心してしまう自分がいます。
〇文章読本が説く五大心得
【その1】わかりやすく書け 【その2】短く書け 【その3】書き出しに気を配れ
【その4】起承転結にのっとって書け 【その5】品位をもて
〇文章読本が激する三大禁忌
【その1】新奇な語(新語・流行語・外来語など)を使うな
【その2】紋切型を使うな 【その3】軽薄な表現はするな
〇文章読本が推す三大修業法
【その1】名文を読め 【その2】好きな文章を書き写せ 【その3】毎日書け
ちなみに、私は、著者が度々引用していた、谷崎潤一郎・三島由紀夫・丸谷才一の「文章読本」、
本田勝一の「日本語の作文技術」を持っているのですが、
いずれの本も私には別世界で、敷居が高いように感じてきました。
でも、これからこれらの本に目を通す際には、
読み方と考え方に少し変化が生じているかもしれません。

- 作者: 斎藤美奈子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/12/10
- メディア: 文庫
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