しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

身体と思想の包み紙

文章読本さん江』(斎藤美奈子著:ちくま文庫)を読了しました。

結論から先に言うと、読んでいてとても痛快な本でした。

文章読本」とは、「文章」とはいったい何なのか、著者は次のように述べられていました。


『原点にもどって考えてみよう。文章読本とは、はて、何なのか。

 私はこういうことでないかと思う。文章とは、いってみれば服なのだ。

 「文は人になり」なんていうのは役立たずで、ほんとうは「文は服なり」なのである。

 こんなことはいまさら私がいうまでもなく、古代ローマの時代から指摘されていたことだった。』


『文は服である、と考えると、なぜ彼らがかくも「正しい文章」や「美しい文章」の研究に

 血眼になってきたか、そこはかとなく得心がいくのである。

 衣装が身体の包み紙なら、文章は思想の包み紙である。』


『文は服だっていったじゃん。服だもん。必要ならば、TPOごとに着替えりゃいいのだ。

 で、服だもん。いつどこでどんなものを着るかは、

 本来、人に指図されるようなものではないのである。』


文章を書くのも服を着るように、人に指図されるようなものではないと言われると、

なんだか肩の荷が下りるような気もしますが、やっぱり少し不安でもあります。

そういう意味では、著者が分析された、次のような「文章読本の教訓」を読むと、

逆に安心してしまう自分がいます。

 〇文章読本が説く五大心得

 【その1】わかりやすく書け 【その2】短く書け 【その3】書き出しに気を配れ

 【その4】起承転結にのっとって書け 【その5】品位をもて

 〇文章読本が激する三大禁忌

 【その1】新奇な語(新語・流行語・外来語など)を使うな

 【その2】紋切型を使うな 【その3】軽薄な表現はするな

 〇文章読本が推す三大修業法

 【その1】名文を読め 【その2】好きな文章を書き写せ 【その3】毎日書け


ちなみに、私は、著者が度々引用していた、谷崎潤一郎三島由紀夫丸谷才一の「文章読本」、

本田勝一の「日本語の作文技術」を持っているのですが、

いずれの本も私には別世界で、敷居が高いように感じてきました。

でも、これからこれらの本に目を通す際には、

読み方と考え方に少し変化が生じているかもしれません。

文章読本さん江 (ちくま文庫)

文章読本さん江 (ちくま文庫)