今日22日の日経新聞電子版「政治アカデメイア」に掲載された、清水真人・編集委員の執筆による
『「オデュッセウスの自己拘束」なき財政健全化計画』という記事が勉強になりました。
印象に残った箇所を次のとおり書き残しておきます。
首相の安倍晋三は自民党総裁3選を見据え、堅調な景気の維持を最優先。
財政健全化の目標年次も、向こう3年間の歳出抑制の目安も、
「縛り」は極力緩めたい思惑で、経済界も市場関係者もそれを早々と織り込み済みだ。
ギリシャ神話の英雄オデュッセウスの逸話にある「事前の自己拘束」なしでは、
財政出動の誘惑を耐えしのぐのは難しい。
主人公オデュッセウスは「トロイの木馬」の計略でトロイア戦争に勝利した。
帰路の船出の際、魔女セイレーンの魅惑の歌声に引き寄せられれば、荒海にのみ込まれると警告を受ける。
そこで誘惑に負けないよう、自らの身体を帆柱にがんじがらめに縛りつけさせ、
難所を切り抜けて祖国に帰り着く。不合理な意思決定を避けるための「事前の自己拘束」の例だ。』
『財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会が3月30日付で公表した海外調査報告書は、
1枚の絵画「セイレーンの誘惑」を図版で紹介している。
分科会会長代理で成城大特任教授の田近栄治、慶大教授の土居丈朗らが調査で訪問したオランダ財務省。
その大臣室には「オデュッセウスの自己拘束」のエピソードから題材を採ったこの絵が飾られているという。
オランダ財務省高官は「財政健全化という難航海では、誘惑に負けない仕組みが必要」だと田近らに説いた。
オランダは08年にリーマン・ショックに伴う金融危機で財政収支が赤字に転落したが、
主に歳出抑制によって16年に黒字を達成。
17年の債務残高GDP比は欧州連合(EU)の求める基準60%を下回る見通しだ。
小国とはいえ、日本とは比べようもない健全さだ。』
「セイレーンの誘惑」という絵画がどんなものなのか興味があったので、
さっそく「財政制度分科会」の「海外調査報告書」に目を通してみました。
いゃあ~、それにしても、財政健全化計画実行の大切さを分かりやすく解説するために、
このようなギリシャ神話の逸話がすぐ思いつくのは、さすがだと思いました。
私もずっと以前には、ギリシャ神話にも興味があって、その関連本を何冊か購入しましたが、
阿刀田高さんの『ギリシャ神話を知っていますか』(新潮文庫)以外の本は、
登場人物が複雑なこともあって、途中で挫折しました。
これを機に、もう一度チャレンジしてみようと思っています。
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